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魔導師ルーンと50年  作者: たるもう
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1 状況把握

色々直しつつ

 体が焼けるような、凍るような感覚。

自身というパズルを何度も組み立て、崩す。

それは魔力の嵐から自我を守るように組みあがっていった。


とある山のふもとの洞窟にて


「うぅ……」

異様に頭が重く感じ、その不快感に顔をしかめる。

頭を少しゆらすと、その顔にはさらさらとした髪がかかる。

髪の色を目にしたとき、思わず目を見開く。

「銀色……一体何が」


立ち上がろうと腕に力を入れるが、支えきれずに力尽きてしまう。無駄に体力を消費するのは避けたいので、横に寝転がったままの姿勢であたりの様子を伺う。

地面から伝わる冷たさが意識を覚醒させていく。徐々に体の感覚が戻ってくるのを感じ、大まかな記憶を整理していく。


あの時、ミルアとムウニが秘密を教えてあげると言い。恐らく秘密とやらのきっかけになる行動をとろうとしたはずだ。しかし、ミルアが水晶に魔力を注ぎ始めたとたんに、水晶がミルアの魔力を自ら吸い上げ始めたのだ。


魔力を全て吸い上げられた者は、死にはしないものの身体にとって大きなダメージになる。


魔力を吸いとられているミルアはどんどん顔色が悪くなっていくのが分かった。

急いでミルアを支えながら小さな手から水晶をもぎ取る。

その魔力の流れを止めようとルーンが干渉した瞬間、紫色の水晶が赤く変化した。


その後から記憶が曖昧になっている。

確かに覚えているのはこちらに手を伸ばすムウニと、水晶と共に暴走しそうになっていた自らに施した封印の術式だけだった。

(このだるさは、とっさに発動させた反動かな)

段々と体が冷えてきて次第に考えもまとまってきた。

これ以上体が冷えてはまずいので体を起こす。

先ほどから辺りは静かなのでとりあえずは安全なようだ。



冷えた体をさすりながら近くの岩に背を預ける。ごつごつとした岩の感覚が夢ではなく、現実だということを教えてくれる。

これからすべきことをまず決めなければならない。

そのことを慎重に決めるためにしばらく動かないことをする。魔法もやめておいた方がいいだろうと判断する。迂闊な行動は命取りだと、研究室の見習い時代に厳しく叱られたものだ。

そして周囲を警戒しながらこの状況を理解するべく、自らの思考の海へと飛び込んでいった。


―――――――――――

とある村


憎らしいほど晴れやかな天気の中、本を片手にうたた寝をしているのは気持ちがいい。

しかし、そんな安らかな時間には必ず邪魔が入る。

「……ゼル! アゼル! 」

キンキンとした声で呼ばれる自分の名前。先ほどまでの穏やかな時間は吹き飛ばされてしまったようだ。

仕方なく本を閉じ、声の主の方へ邪魔されたことに対して恨みがましく思いながら視線を向ける。

「お前は人の昼寝を邪魔するのが得意だな」

「あら、こんなところでサボっている誰かさんを呼び戻しにきたのよ? 」


やれやれ、といったそぶりをしながら隣に座ってくる少女。俺のサボっている場所を嗅ぎ付けるのが得意だ。

「見張りはどうしたのよ」

「適当に代わってもらった」

平然と答える俺にあきれながらため息をつく隣の少女。

「何か……」

文句はあるのか、と問おうとする。だがその言葉は、本能を刺激するような音によって遮られる。


激しい爆発音へ惹き付けられるように視線を向ける。数瞬前まで日常を謳歌していた二人の若者は、赤く染まる空と……煙の上がる故郷を目に写し、立ち尽くすしかなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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