967.
「……よろしい、では今回の定例会は終了としよう」
「はい、お疲れの出ませんよう……」
ライタント以外が、岩屋の執務室から出ていく。二人だけになった執務室で、岩屋はふぅとため息のような深呼吸のような息を吐いた。そして、椅子に深く腰掛け、ゆったりとする。
「……そんな目で見るな」
ライタントへ、岩屋が言う。ライタントは、何やら冷ややかな目で岩屋を見ていた。それについての岩屋の答えだ。
「僕だって、好きで殺せと言っているのではない。ただ、僕は、この国が存続することを願って、他を圧倒することを目指しているだけだ」
「護王将軍を殺すことによって、鎮王将軍をこちら側へと引き込もうとしている。そういうことですか」
「まさに」
「それならば、護王将軍に我々が圧倒するということを示せばよろしいのでは」
「あの男、前来た時に同席していたな」
「ええ」
ライタントは岩屋の目の前にあるソファに腰掛ける。
「ならば、あの男の本性を知っているはず。自らに自信を抱き、権威と権力を兼ね備え、他の者を従わせようとする、あの男を」
ライタントは何も言わない。ただ、岩屋の言葉に耳を傾ける。
「我々に従おうとしないことも大いにありうる。危険性は常にある。彼を我々の下につけるとして、必ずどこかで反乱の頭領となるだろう。それは避けなければならない。常に、だ」
「ならば大総督についてはどうなのですか。彼は元奉楽将軍であり、旧将軍の一人です。彼も反乱の危険性があるのでは」
「今は、大丈夫だ。彼は僕にかなわないということを理解している。そのうえで、大総督という地位を与えて、他の元将軍よりも一段高い地位を与えているのだから」
「それならよいのですが……」
ただ、と岩屋は作戦を考えてライタントに言う。
「作戦では生け捕りを前提とすることにしたい。話はすべてここからだ。ただ、困難な場合や、自決することを遮るものでもない。彼には彼なりの矜持があり、それはこちらが邪魔するものではない。むしろ、邪魔してはならない。これらを満たしたうえでの生け捕りとなる」
「それが岩屋さんの望みであれば、私は止めません。ただ、これだけは言っておきます」
ライタントはソファからよいしょっと腰を上げる。そして、岩屋へと向かって言い放った。
「人は人を視ますよ、貴方が思っている以上に」
「覚えておくよ」
それから溜まっていた書類へと岩屋は視線を移し、ライタントは別の仕事をするために執務室から出ていった。




