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地図は、A2ぐらいの大きさがあるが、年季が入っているようだ。さらに、何回も折り畳められているせいか、折跡の線がはっきりと残っている。かと言って、その線が地図を邪魔をしているかというと、そうではない。見ておきたいところは、ちゃんと見えるため、問題はなかった。
「さて、奉城は、3重円によって成り立っています」
ラグは指をさしながら、岩屋に奉城の説明をする。
奉城は、大きく4つの区域に分けられる。今、岩屋とラグたちがいる郊外地域。第1の城壁を通って中に入ると城内地域。さらに第2の城壁を通ると中枢地域となり、第3の城壁を通って玉地域となる。玉とは、王将軍のことであり、一般に言われている将軍の居城である王宮とは区別するべき場所ということで、玉と名付けられたらしい。第1の城壁は、南東、南西、北東、北西に門がある。第2の城壁は東西南北それぞれに門がある。第3の城壁には、南に正門、東西北には単に門と呼ばれる門がある。一般に使われるのは来たもんであるが、今回のような大規模な行事時に限って、正門が利用される。門からは玉に向かって一直線に大通りがあるが、城壁において区切られている。城壁の外側はぐるりと一周するように環状道路がある。第1の城壁の外の環状道路を第1環状、第2の城壁の外の環状道路を第2環状、第3の城壁の外の環状道路を第3環状と呼ぶ。
岩屋とラグは、まず南東門から城内地域へと入る。そのまままっすぐ大通りを歩き、続いて第2環状を1周と少し歩く。そこで南門へと着くと、中枢地域へ。そのまま大通りを歩き、第3環状を1周。そして正門を通り、玉地域へと入ることになる。
「……この時、城内地域にはいる際に、奉王将軍からの使者が騎馬で出迎える手はずになっています。この方について、城内へと入ることになります」
ラグの説明に、岩屋が尋ねる。
「つまり、その後の進路については、使者についていけばいいということだな」
「その通りです。私たちは、その時点で横並びになり、列は城内形態と呼ばれる形になります。この場合、新任の将軍が使者のすぐ後ろにつき、その後ろに代表騎馬兵2名、荷物の列、さらに騎馬兵と歩兵、最後に殿部隊となります。今回の場合は、私と閣下が使者のすぐ後ろにつき、その他は同じとなります」
「なるほどな。その形態はどこまで維持されるんだ」
「玉地域に入る時までです。この時点で、荷物の列以降と別れ、馬から降りることになります」
ラグが言うと、地図をひっくり返す。そこには、玉地域の建物図が、細かく書かれていた。