94.
「まずは、奉城へ入城する際から始めます」
「頼む」
ラグが説明をはじめるのを、岩屋は静かに耳を傾けた。
勅書を持った岩屋が先頭に立ち、正装をして騎馬で向かうことになる。ここからは確実に徒御行列を行う必要がある。先頭に奉執将軍、つまり岩屋が1人で。そのすぐ後ろに騎馬兵が2人、荷物の列がくる。荷物の周りは歩兵と少数の騎馬兵が取り囲む。荷物自身、馬車によって運ばれているが、それには歩兵が搭乗している。
殿は本来であれば副官が行うことになる。岩屋の場合では、ライタントの役目だ。だが、ライタントはここにはいない。さらに、将軍が2名という今回の特殊性のせいで、ライタントは省略となった。一方で、奉葎将軍の第一秘書は荷物とともに、この宿において合流することになっていた。彼が今回の徒御行列の殿を務めることになっている。そのことは、あらかじめ奉王将軍に対しても報告されていることであり、承認を得ている。そうでなければ、行列の行進を行うこと自体が不可能だっただろう。
「……なるほど、その行列を保ちながら、入城するということか」
「そう言うことです。ここからでは南東大門と呼ばれる門からの入城になるでしょう」
ラグは続けて儀典集の上に地図を広げる。それは、奉城の全体鳥瞰図であった。




