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岩屋が定例会を開いた翌日には、パイースが岩屋の元へと紙の束を持ってきていた。3cmくらいの厚さはあるだろう。それは、全てが岩屋に提出するための報告書だった。
「……もうできたのか」
「ええ。私も、教育は重要だと思っていますので、自主研究という形でしておりましたので」
「そうだったのか」
「はい」
返事しつつも、岩屋へと報告書の束を渡す。図、画像、それに文章で構成されたその報告書は、とてもよくまとめられていた。ただ、まとめられているからといって、これは作り過ぎだ。岩屋は思いつつも、声に出さずに一気に読み進める。
速読よりもさらにはやい、瞬読のように、1ページにつき1秒もかけずに岩屋は読み進めていく。本当に読んでもらっているのか心配なのか、パイースが声をかけた。
「あの……」
「ん?」
読みつつ、岩屋が言う。
「ちゃんと読んでくださっているのでしょうか……」
「ちゃんと読んでるよ。誤字も今まで6か所見つけた。ページと行数はあとで教えてあげよう」
「はぁ」
何と言えばいいのかわからず、パイースがなんとも気の抜けた声を出す。
10分かからず、報告書の山はきれいに読み切られた。そして、岩屋は報告書の束に右手を置きつつ、パイースにいう。
「この実施計画書でいこう」
「はいっ」
「それじゃあ、これらの詳細はあと6日でできるよな。ここまでできてるのなら」
「はい、できます」
「それじゃあ、よろしく頼むぞ」
やおら立ち上がり、岩屋はパイースの手をつかむ。
「この計画、君が頼りのようだからな」
「はい、どこまでも頑張りつくします」
岩屋へ握り返すと、すぐに手を放す。そして報告書を岩屋のところに置きっぱなしにして、すぐに執務室を後にする。岩屋はその後姿をみて、椅子へと腰かけなおす。
「どうしました」
「いや、彼女は研究熱心だなと思ってな」
報告書兼計画書の表題は、今後の教育方針について、としてあり、副題としては将来の世代の育成とあった。




