85.
1週間後、いよいよ岩屋は試作機となる懐中電灯を創り上げた。それは、片手にすっきり収まるように、円柱形に近い形をしていた。電池は内蔵されているため、取り出して取りかえると言うこともできなくはない。ただし、替え部品はないため、事実上の使い捨てだ。替えはこれから作るところではあるが、実際に使ってみなければ、様子は分からないということで、本体だけ創り上げたのだ。
「さて、試しにつけてみようか……」
底にあるスイッチをひねると、無事に電球が明るくなり、光を発し出す。成功だ。電池も、特に発熱するというわけもなく、淡々と電気を産み出し続けているようだ。
「よし、これで奉王将軍には会うことができるな」
電池は、探してみたが、この世界には未だ作られた形跡がない。電気自体も、つい最近使われ出したものだと言うことが分かった。どうやら、昔の伝承のように、岩屋の他にもつい最近、電気の力を知っている人がやってきているようだ。だが、その人と岩屋は、ついに今まで会うことがなく、そのまま奉執将軍を襲ることとなった。どうやらそういうことらしい。
岩屋は少し残念に思いつつも、今の状況を思い出す。やる気さえあれば、人一人、呼びつけることも造作もないことだ。探すことも、どうってことはない。ならば、と岩屋はライタントを呼び出す。
「どうしましたか」
「人を探してほしい。この世界に電気を作った人だ。まだ生きていればの話ではあるがな」
「分かりました。さっそく調べてみましょう」
「頼んだ」
岩屋は、懐中電灯を片手に持ち、光を調節しながら言った。スイッチのひねり方次第で、強い光から、弱い光まで光量を変えることができるのだ。
とりあえず、奉王将軍への土産物が出来上がったのだ。まずは一安心と岩屋は胸をなでおろした。