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「素敵なお話、ありがとうございます。皆さん、ヒラハ殿に盛大な拍手を」
岩屋が立ちあがり、開口一番ヒラハに言った。拍手を促すと、給仕係も含めた全員がヒラハに向かって拍手を送る。思わずヒラハは立ちあがり、1回お辞儀をした。そして、無言で、ただし笑顔ではあったが、席に座る。それを見届けてから、岩屋は続きを語りだす。
「さて、国と言うのは、強固な地盤と、健全たる王と、繁栄する民によって成り立っております。これら1つ欠けても、国は成り立たなくなります。ここでいう地盤とは、国土のことです。国土とは、民を養い、育み、時に苛烈なほどまでに激励を行う、我々が立っている土地のことです。この土地は、痩せ衰えているところがあちこちで見受けられるようになりました。これでは、民は食べ物を失い、生活が破たんし、ひいては国が滅びるでしょう。地盤とは、それほどまでに重要であり、生活に欠かせないことなのです」
一息入れ、さらに岩屋は語り続ける。
「では、健全たる王、繁栄する民は。民とは人のことであることは、疑う余地がありません。また、健全たる王とは、奉王将軍のことを指します。これらについては、特別言うこともないでしょう。ですが、民無くして王無し、王無くして国無し。この言葉が指し示す通り、民こそ国の基盤を為す存在です。地盤の上に基盤があり、その上に、束ねるべき王がいるのです。これを違えてはいけません。そこまでお話しして、私が何を言いたいか。それは、民を最も大切にすべきということであり、土地を愛さなければならないということであり、良き王であるならば、私は忠誠を尽くすということであります」
呼吸をすることも忘れてか、さきほどからノンストップで話し続けている。
「さて、私のつまらない話を、長々と聞いてくださってありがとう。ヒラハ殿、奉王将軍に先に伝えておいてください。何をしようとも、奉執将軍は必ずその日に参内しましょう」
ありがとうございますともう一度結びの言葉として岩屋は全員に告げた。それをきっかけとして、ラグが立ちあがる。岩屋は代わりにホッとした表情を浮かべながらも座った。