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最初の砦が陥落したという話は、ほとんど即時に伝わる。特殊部隊の人らが、それぞれの砦から報告をしているからである。それも、暗号ではなく、平文で送っていることから、相手への動揺を誘うことが目的だと、奉王将軍は思った。
「さすがね」
砦が一つ、また一つと奪われているのにもかかわらず、奉王将軍はそんなのんきな口調だった。何か秘策があるのかもしれないが、それが何かなのかは、全く分からない。
「例の作戦、発動準備を。命令したらすぐにでもできるほどに」
「御意に」
すぐそばに侍立していた部下がその王将軍の命令を伝えに駆けていく。それから一息、ため息をついてから、奉律将軍がいるはずの省城の方角を見た。
「いつ来るのかしら……」
それは、恋をしている乙女の顔にもよく似ていた。




