7.
パーツは大きなものが複数あったため、二人は何往復もしなければならなかった。だが、サザキと岩屋は、それを苦とは思っていなかった。これから、この里にとって大切なことをしている、そのことが、岩屋たちを動かしていた。
川辺まで来ると、置いていたパーツを組み立て始める。岩屋の頭の中には、すでに設計図があったため、それに合わせていくだけでよかった。サザキは、岩屋と一緒に、楽しんで組み立てを手伝っている。
「よし、これで完成だ」
岩屋がサザキに話す。すでに、水車としての機能が十分果たせれるように、水を受けたらすぐに回るようになっている。試しに手で支えつつ、川に浮かべてみると、勢い良く回り出した。
「これなら大丈夫そうだな」
岩屋がサザキを見ると、川辺で回っていた水車をじっと見ていた。何が楽しいのか、岩屋にはわからなかったが、サザキは楽しんでいるようだった。
「よし、最後の組み立てといこう」
岩屋が持ってきたのは、水車本体だけではなく、それを支えるための台座も持ってきていた。
「先生、ここにいましたか」
覆いをどうしようかを考えている最中の岩屋に、ライタントがやってきた。手には大きな袋を持っている。岩屋は声をかけられた方向を向き、タイラントをすぐに見つけた。シャツに半ズボンというラフな服装でああるが、それよりも手に持った、かなり大きな袋を気にしているようだ。
「それ、なんでしょうか」
「ケーブルですよ。これを使って、里全体に電気を通そうかと」
ふむとつぶやいてから岩屋がケーブルを受け取ると、すぐに地面に置いてしまう。そうしてから袋から取り出してみる。数百メートルはあるもので、かなりずっしりとしていて重たい。岩屋がどうにか持てるぐらいの重さだ。それをタイラントは軽々ともっていたことになる。すごい怪力だと、岩屋は素直に驚いていた。
「これぐらいあればいけますね。バッテリーはあるんでしょうか」
「ああ、あるよ。ただ、数年前、町に出た時に買ったものだから、使えるかどうかわからんがね」
岩屋はそれを聞きながらも、最後のセッティングをしていく。
まず、水車を設置しやすくなるように、川辺の一部を整地する。次に、そこにあらかじめ組み立てておいた地面に設置する用の杭を強く打ち込む。なにか堅いところにすぐに到達した。岩盤のようだ。岩屋は、にやりとしつつ、さらに打ち込みを続けると、その層にしっかりと杭を食いこませることができた。
そして、いよいよ大物の水車の設置をはじめる。
「手伝いましょう」
ライタントがすぐに手を貸す。水車は杭に支えられて、川に沈めた瞬間に、安定して動き出した。がたがたがたという雰囲気ではなく、がががががと言った効果音の方が適切だろう。それほどに動きが激しい。だが、その場にとどまり続けているのは間違いなく、岩屋はそれを見てやっと安心したようだ。
「あとは発電がうまく行っているかどうかを確かめるだけですね」
横でケーブルをほどき続けていたサザキを呼び、ケーブルの端を持たせる。そこに、水車側に設置した発電機を接続し、ケーブルの反対の端をニクロム線のようなものにつなげる。また、その先は地面にそのまま突き刺して、アースのような役割も果たさせた。
すぐにニクロム線は赤熱をはじめ、はじけ飛びそうになった。その瞬間に、岩屋は地面に刺さっているものを蹴飛ばして、断線させた。
「よし、これで大丈夫でしょう。後は、バッテリーの様子を見てみますかね」
「よろしくお願いします」
ライタントは一礼して、岩屋とサザキをケーブルを延ばしつつ、バッテリーのところへと案内した。
その後ろにいる陰に気付く事は、なかった。