78.
乾杯を済ませ、にぎやかしく晩餐会は続いている。
「さて、今のうちに済ましてしまいましょう」
「何をでしょう」
岩屋は勅使に尋ねる。ちょうど魚料理が終わり、肉料理が来る。その間のことである。勅使はすぐ横に座っているネロと、岩屋の身に聞こえるように話しだす。
「奉王将軍は、あなた方が確かに当人らを殺したかどうかの証拠を欲しております。それらはお持ちでしょうか」
「ええ、もちろん」
岩屋は自身に満ち溢れた回答を出す。当然、岩屋は殺害した当人であるために、このことは把握している。しかしながら、ネロについてはそうではない。それでも、ネロも自身たっぷりに勅使に答えている。
「確かに持っております」
「そうですか、それはどのような」
勅使の質問に、まとめて岩屋が答えた。
「まず、奉執将軍については、首を。生首です。奉葎将軍については、間違いなく常に身につけていた装飾品を」
「なるほど。それらならば奉王将軍も認めて下さるでしょう。それでは……」
勅使が何かを言うより前に、肉料理が運ばれてくる。それによって、会話は途切れてしまった。その後、勅使がこの会話の続きをすることは、結局なかった。