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74.

「なんでしょうか」

 ライタントが、岩屋へと真向かいに立ちながら尋ねる。執務室には、ライタントと岩屋の他に、ラグとライタントの補佐に当たる人がいた。その場で、岩屋がライタントに告げる。

「ジュン・ライタント。貴殿に今回の使者役を務めるにあたり、ここに勲記を授け、勲章を与えるものとする。雷玉勲章だ」

 雷玉勲章は、王玉勲章の一つ下の勲章に定められており、勲一等という勲等が定められている。これは、奉執将軍側の勲章である。対象者は、いわゆる大使や外交官、その他高官にも与えると言うことになっているが、実際に授けることになるのはわずかだ。雷玉勲章の名前の由来は、雷玉と呼ばれる黄色をした透明な宝石が、中心にはめ込まれているためだ。勲章制定の由来はもっと違っていて、初期の頃の奉執将軍に献上された宝石の一群があった。だが、その中でひときわ輝く物があり、それが稲妻のように光を放つため、雷玉と命名した。だが、これでは愛でることができぬということで、近くにあった板に雷玉を埋め込み、落ち着かせることに成功した。後にその板は勲章として新たに造りかえられ、雷玉を献上した高官に授けられたという。

 力を象徴するその勲章は、大綬として肩から飾り帯を使って下げると言うことになる。その伝達式も、ここで一気にやってしまおうと言うことらしく、すでに、何重にも塗りが施された箱の中に、勲章が用意されていた。だが、それは後回しとし、もう一つの勲章の伝達が先に行われることとなった。つまり、奉葎将軍側からの叙勲である。


 奉葎将軍はラグの為、今度はラグがライタントに伝える。

「ジュン・ライタント。貴殿がこのたびの使者となるため、ここに勲記並びに勲章を授ける」

 奉葎将軍がライタントに与えた勲章というのは、シュブル勲章と呼ばれているものだ。これも勲一等で大綬が授けられる。シュブルと呼ばれるのは、最高級の布の名称だ。大綬はこの布で作られており、勲章はシュブルを幾重にも重ねて堅くした物を使っている。奉葎将軍の勲章の特徴として、このように繊維で作られているものがあるというところにある。ただ、当然他の勲章類よりも燃えやすいため、火気厳禁とされる。

「……このようなもの、私にはもったいないですよ」

「なに、奉王将軍と会うのであれば、これほどの勲等がなければならないだろう。それに、これまでよく働いてくれた。それらの感謝の気持ちも込めてある」

 岩屋がそう声をかけてから、2人は箱からそれぞれ勲章を取り出し、それぞれを順番に掛ける。まずはシュブル勲章、次に雷玉勲章だ。2つを一緒にかけると言うことは、本当はありえないことなのだが、今だけは一緒におとなしくかけていた。

「これからも、よろしく頼むぞ」

 岩屋とラグがライタントにかけ終わると、岩屋が手を差し出して握手を求める。

「……はいっ」

 熱い決意とともに、ライタントは返事をした。そして、ガシッと握手を岩屋と重ねた。

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