表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/4103

6.

 岩屋は、それから一睡もすることなく作業を続ける。そして翌日。いつの間にか眠っていたサザキがぼんやりと起き上がった。そこは、物置の一角、床の3分の1ほどの大きさのフローリングの上だった。土間のところでは、岩屋が作業しているのが、サザキははっきりと見れた。部品をねじで止め、少しずつ大きくしているところだ。

「おや、起きたかい」

 サザキが目を覚ましたことに気づいた岩屋は、作業を一時止め、サザキのところへとやってきた。それから、かたわらに置いてある皿を渡す。

「朝ごはん、食べないとだめだからな」

 六切りパン一切れ、大根葉と山菜の浅漬け、豆腐半丁が、そこに盛られている。ただ、汁は極力除かれている。そのため、パンがふやけるということは起きていなかった。

「何してるの?」

 サザキがぼんやりとしながら聞く。岩屋は微笑み、皿を渡して背伸びをする。

「もう終わるところだよ。ああ、ご飯を食べて手伝ってくれるかな」

 サザキに頼むが、サザキ本人は寝起きのせいか、未だぼんやりとしている。そこに、物置への足音が聞こえる。

「先生、起きてますか」

カラカラと軽い音とともに、扉が開けられる。朝日が部屋の中にもぐりこんでくるが、岩屋は気にしない。明り取り用の窓からすでに見えていたからだ。

「ああ、起きてますよ」

 彼に岩屋は答える。眠い目をこすりながらも、作っていた部品を集めている。

「サザキ、おはよう」

「おはよう、里長(りちょう)さん」

「里長という名前なのですか」

 サザキの呼びかけの名前に、岩屋は気になって聞いてみた。彼は笑いながら、それをやんわりと否定する。

「里長というのは、この里を治めている長というだけです。まあ、村長とかと同じですね。名前は、ジュン・タイラントと言います」

 ここで、初めてタイラントは自己紹介をした。ようやく里の一員として迎え入れることができる、そう確信したからだろう。そして、岩屋のあだ名は、どうやら先生で固定されたようだ。

「時に先生、それはなんなのですか」

 後ろに置いてある何かしらのパーツを指さし、タイラントは岩屋に尋ねる。すぐよこでサザキが朝ごはんを食べ終わったようで、食器をタイラントに差し出している。

 タイラントがそれを受け取っているのを見つつ、岩屋は部品の一つを手にとって、タイラントに見せる。渡したわけではない。そもそも食器を持っているのだから、タイラントは持つことができない。

「これで、水車をつくります。あそこの川にこれらの部品を組み立てたうえで浮かせ、回転力を発電に生かす予定です」

「なるほど、何か必要な物なぞありませんか」

 タイラントは、下心なく、単純な親切心から岩屋に聞いた。それを聞いて岩屋は、若干考え込んだ上で、タイラントに話してみる。

「ならば、家などにつなげるための送電線があればいいのですが……」

 タイラントは岩屋の話にすぐに答える。

「倉庫の中を探してみます。それでは」

「ええ、ありがとうございます」

 タイラントが去ってから、岩屋はパーツの最終確認をして、いまだ寝ぼけたような表情をしているサザキとともに、川へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ