68.
「心当たりはあるのでしょうか」
ラグが岩屋へと尋ねる。なぜ、よりかそのことが先に出てくることを見ると、やはり出世欲というのは人一倍大きいようだ。岩屋はラグへと答える。
「あった。だが、断られてしまってな。それで、一つ提案だ」
横に居るラグとライタント、二人を交互に見つつ、どうだと聞く。
何をを言いたいか二人はすぐに察したようだ。ラグは喜んでいるが、一方のライタントは嫌そうな雰囲気を出している。ライタントはもう代理職からすら降りたいと考えており、ラグは将軍の位を欲しがっているからだ。それが岩屋は十分に理解したうえで、二人に聞く。
「奉葎将軍、どちらかが継いでほしい」
「我々のどちらか、そういうことでありますか」
ラグがライタントよりも先に岩屋へ聞いた。それはやりたいという自信の現れであった。
「そうだ。ラグかライタントか。どうだろうか」
無論、と岩屋はさらに続ける。
「嫌だと言うのであれば、別の第3者に頼もうと考えている。だから、断ってもらってもかまわない。その上でこうやって聞いているわけだ」
ライタントを見て、明らかに断ろうとしている。一方のラグを見て、聞くとすぐに承諾すると判断する。そこで岩屋は考えた。どうだろう、ラグにやらしてみてはいいのではないか。だが、これから奉執将軍の地位も欲しがるという可能性はありうる。それを回避するために必要なのは、近くに置き続けることか。だが、と岩屋は思う。危険度でいえば、身近に置き続ける方が危険度は高い。地方に飛ばした方が、いくらかましであろう。そして、岩屋は結論を出した。
「ライタント、するか?」
それを聞いた途端に、ラグは残念そうな顔をし、ライタントは驚いた顔をしていた。
「いいえ、私はするということは出来ないでしょう。代理を行うのが精一杯です」
「では、ラグはどうだ」
みるみる間に、ラグは喜んだ顔をした。それは、やりたいと言う意思の表れであろう。
「はい、誠心誠意行います!」
「うん、それがききたかった。違えるなよ」
念押しのように、岩屋はラグに言った。それを、ラグは嬉しそうにうなづいて受け入れていた。




