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岩屋はその訓示を、ほぼリアルタイムで聞いていた。今回は飛行機を経由した無線の試験を兼ねたもので、どこまで聞こえるかや、聞こえやすさなどを調べていた。そのついでに聞いていたということである。
「そうか、まあ、そうか……」
久しぶりに執務を行っている最中、その訓示に耳を傾けていた。そのときばかりは書類にサインする手も止め、じっと聴いていた。
「どうしましたか」
ライタントが、岩屋へと尋ねる。ちょうどサイン済みの書類一式を持ち出そうとしていたところだ。
「いや、強いなと思ってな」
「はぁ」
ライタントは、書類を一枚ずつ確認をしながら、気の抜けたような返事をした。
 




