表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/4159

51.

 翌日、岩屋はホテルから出た。ロビーにはイグノートの姿は全く見えない。怪しそうな人も、どこにも見当たらなかった。鍵を返し、必要なお金を支払ってから、ホテルから出発した。ちなみに、夜食と朝ご飯の代金だ。

 出発して早々、岩屋は近くに合った店に寄り、紙とペンを買った。紙と言っても、羊皮紙のようなもので、ペンは万年筆に近い。インクはカートリッジ式ではあるが、別売りのカートリッジ供給用のインクを買えばいくらでも使うことができる。奉執将軍領では、ライタントやラグたちがしっかりとしているだろうから、ここでは岩屋は奉葎将軍に真剣に立ち向かうことができる。そのための下準備を、機能ホテルで夜じゅう使って考えていた。


 岩屋は買い終えると再び奉葎将軍の省都へ向かって歩き出す。その歩調に合わせるように、1人の女が付いてきていた。岩屋はしばらく歩き、立ち止る。すると、女も若干遅れて立ち止まる。岩屋が歩き出すと、その女も歩き出した。何度か繰り返してから、そうか、と岩屋は気づいた。どうやらイグノートの仲間の人が着ているようなんだと。

 だが、岩屋はその人を無視することにした。今のところ、特に害があるようには思えなかったからだ。そもそも、岩屋自身がここに居て、奉葎将軍を付け狙って移動をしているということは、イグノートから連絡が行っているはずだ。無論、密通していたとしてイグノートが殺されていなければの話ではあるが。そのあたりは、岩屋の知ったところではない。イグノートは岩屋の提案を切った。それが全てだ。だから、イグノートについて、岩屋は深く考えるのを止めた。

 それからしばらく歩き続け、女は同じスピードで付いてくる。どこまでも付いてきている。時間はお昼ごろ。もうそろそろ昼食を取ってもよさそうだと考えた岩屋は、とある軽食屋に入ることにした。レンガ造りで頑丈そうな店。だが、店先には岩屋の太ももの半分ぐらいの高さの看板がある。軽食屋というよりかは、カフェといったほうが経営的には近いのかもしれない。ちょうど岩屋はのどが渇いていた。岩屋はその店に入って、付いてきている人の出方を見るのもいいだろうと考えた。

 木製のドアをあけると、カウベルのようなカランカランと小気味いい音が響く。

「いらっしゃい」

 コップを白い布でふいている人が、岩屋が入ってきたことを察して声をかける。見回すと、店内にはその人しかいない。岩屋はカウンター席になっているところに腰を落ち着ける。机が4つ、それぞれ椅子が4つずつあり、そこで16脚。さらにカウンターには6脚。合計22人が店の定員だ。岩屋が入ってからちょっとして、女の人が入ってきた。

「いらっしゃい」

 岩屋の注文を聞こうとしたお店の人が、その人にも声をかける。その女性は、迷うことなく岩屋から一つ開けた席に座った。そして、それぞれの顔をお店の人は見て、聞いた。

「ご注文は?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ