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49.

「仮にだ」

 イグノートは岩屋に提案をはじめる。岩屋は真剣に耳を傾けていた。

「仮に、俺がお前に協力したとして、その見返りはなんだ」

 イグノートの発言は、もっともな話だと岩屋は思った。その上で、岩屋は考える。イグノートに対して何を与えれば、協力してくれるか。土地か、金か、地位か。もしくはそれ以外か。それらを考えるというのはかなりの時間がかかる。しかし、ここで岩屋は提案を出すことはしなかった。

「何が欲しい」

 逆に岩屋がイグノートに尋ねる。その答え如何によっては、かなえられる条件の提示が来るかもしれないからだ。もしも合わないようだったら、話をここで終えるか、それともすり合わせをするか。その好きな方を選べばいい。

「まずは、家族の安全保障。命を決して狙わないということだ」

 家族を大事にする。そのことから岩屋はイグノートの性格を察する。家族思いであるということは、心根はやさしい人物である可能性が高い。自身の命よりも他人の命を大事にすると言う方向性があるからだ。

「次に、土地の確保。広い土地が良い」

 土地というのは、そこから税を取り立て、自らの私腹を肥やすという計画なのかもしれない。岩屋はそう考えた。だが、それは先ほど、真っ先に条件として提示した家族の安全保障の性格からの推定と異なる部分が出てくる。保身を考えるということは、家族を守るための資金集め、という解釈も成り立つ。要は、よくわからないということだ。

「そして、何かしらの高官の地位も欲しいところだな」

 高官の地位といっても、限られてくる。この世界において最高なのは王将軍、その次が将軍の地位で、その直属の第一部下が3番目だ。さらに広げて、第一部下の部下たちぐらいまでが一般的に高官と呼ばれている。岩屋が務めている奉執将軍のところでいえば、各班の班長クラスまでのことをいう。彼らが高官と呼ばれ、特権とも言うべき権限や権利を持っているわけだ。

 他のところの行政組織については、岩屋は詳しくなかった。ラグが一番詳しいだろうが、この場にはいない。そういうこともあって、岩屋は答えを簡単にイグノートへ話す。

「3つが条件だな」

 イグノートはうなづく。それを見て、岩屋はさらに続けて話した。

「家族の安全については、僕が奉葎将軍になってから、完全に保証しよう。もしも心配であるならば、省都の王宮において、一緒に住んでもらってもかまわない」

 イグノートはそれについてはすでに予想していた答えだったようだ。3つの条件の中で、一番簡単な条件だからだ。

「次の土地と最後の高官の地位、これらについては、一つの提案をしたいと思う」

「なんだ」

 イグノートは、前のめりになって、岩屋の話を聞いている。それほど興味があるのだろう。答えによっては、岩屋に協力してもかまわないとまで考えている。

「君にはぜひとも奉葎将軍の地位を継いでもらいたい。ただ、僕が奉王将軍になると、将軍の地位を変えることを予定しているから、それまでということになるが」

 そのことは、イグノートは予想していなかったようだ。かなり驚いた顔をして、岩屋を見つめている。

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