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僕の異世界復讐話し  作者: 尚文産商堂


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49/4262

48.

 部屋は、掃除が行き届いていた。1人用の部屋らしく、ベッド、サイドテーブル、椅子、便箋の束、それと部屋の天井に一つだけ付けられている電球。トイレは無いがシャワールームがある。飲み物や食べ物といったものは、部屋には無いようだ。代わりに、スリッパとタオル、それとバスローブは備え付けられていた。シャワーには石鹸があるが、液体ではなく固体のものだ。シャワーはお湯は一応出るが、1分と経たずに冷水へと変わってしまう。

 部屋へと岩屋が男を入れると、真っ先に目に付いた椅子に座らせる。それからおもむろに岩屋はベッドへ腰かける。スプリングが全く効いておらず、石の上にでも座っているかのような印象だ。申し訳なさ気に、クッションがあるので、岩屋はそれを尻に敷いた。その上で、男へと話しかける。

「名前は」

 男は話そうとしない。それはそうだろう。名前を知られたらどうなるか分からない。家族もろとも消される可能性だってあるわけだ。そのことを考えたため、男は名乗ることを一切しなかった。

「まあいい、では君のことは、とりあえずイグノートとでも呼ぶことにしようか」

 不明、という意味があるらしいイタリア語だ。正体不明の人だからという理由で名付けたようだ。イグノートは、とりあえず簡単にうなづいた。実名を明かすよりかは、まだましだからだ。

「それでイグノート、君は誰に雇われたんだい」

 これについては察しはついている。部屋へ入る時にも聞いていたのだが、念のためにもう一度聞いているのだ。

「まあ、おそらくは奉葎将軍だろうね。ここは彼の領地な訳だし。僕が行くということは、もう把握されているだろう」

 イグノートは黙りつづけている。それが答えそのものであったためだ。それ以上でもそれ以下でもない。だが、それについては既にばれていたことだ。岩屋はさらにイグノートに尋ねる。

「それで、君たちは何人で行動していて、いつから追いかけていたのかな」

 岩屋が聞くが、イグノートは当然の様に答えない。無論、岩屋はそれをすでに把握していた。イグノートは答えないだろうと言うことを。それゆえに、この質問はここで終わらした。

「君をここに引き入れたのは、別に情報を仕入れるのが目的じゃない」

「……なら、何が目的だ」

 ここで、部屋に入ってから初めてイグノートが話す。岩屋はふむと言って、イグノートへ言った。

「どうせ、王宮へ行くまで見張り続けるのだろう。どこかに罠を張るということは当然考えられることだ。僕ならそうするだろう。それらについて、教えてもらいたい」

「国を売れと言うのか」

「正義を果たせと言うだけだ」

 岩屋は、ベッドから立ち上がった。2歩ほど離れたイグノートのところへ行き、両手でそれぞれの肩に手をかける。それからイグノートの目をしっかりと見据えつつ、話し始めた。

「いいかい、この国は不平不満がたまりすぎている。いつ噴火するか分からない、そんな時限爆弾のような状態だ。いつかは革命が起きる。それが今なだけだ。僕はその革命を引き起こすことができる」

「……革命に協力しろと、そう言いたいのか」

「その通り」

 君なら分かってくれると思っていたよと、岩屋はさらに続けて言う。そして、肩から手を離し、再びベッドに腰掛けた。

「ここで君が断ったら、そのまま部屋から出ていくがいい。次見つけた時には容赦しないだけだ。だが、この革命に協力すると言うのであれば、君は仲間だ。このまま部屋に残ればいい」

 岩屋の提案は、イグノートの目に魅力的に映った。もしかしたら、良い位が得られるかもしれない。それは、これからの交渉次第ではあるが。

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