43.
新たな旅をはじめた岩屋は、数日かけて姿を変えた。
奉執将軍の王宮に居た時には短くしていた髪の毛を伸ばし、体も若干太らせる。服の趣味を変えるため、これまで来ていた服である長袖、長ズボン、革靴、目だし帽から、半そで、半ズボン、運動靴、帽子なしとする。今まで着ていたチェック模様をやめ、ストライプ模様とした。それから少々、見かけも変える。
こうして、見た目を変えた岩屋は、ようやく省都を後にして、目的地へと歩き始めた。目的地は、南に在る奉葎将軍の省都だ。
一方のライタントたちは、この国を治めるための行政組織の改編に取り掛かった。ライタントとラグを中心として、行政刷新を推し進める。
「無駄と思うのは、これぐらいかな」
ライタントが調べ上げたレポートをラグに渡す。軍事組織をはじめとして、役所の出先機関や一部の行政組織を統廃合するということだった。だが、ラグは否定的だった。
「どうだろう、これほど統廃合を進めるのは。確かに予算は限られているが、これほど削ると行政自身に害がある恐れがある」
「なるほど」
では、と言って、現状の行政組織、軍事組織を一つ一つ調べることとした。問題となるのは、その規模、重要度、予算の分野である。
まずは行政組織を見ることにする。行政は、奉執将軍を頂点としている。その直属の部下が第一部下と呼ばれていた人だった。岩屋の代になり、その役割は中書と呼ばれるラグへと引き継がれた。中書は、奉執将軍個人の秘書役も務める、極めて重要な人である。また、岩屋がいない間、奉執将軍として動くために、代理職を新設し、中書と奉執将軍の間とした。
中書の下には、軍事担当である納言班、人事・内務担当の行事班、財政・地方行政担当の出行班、司法・警察担当の警司班、公共工事担当の行公班、外交・教育担当の外観班がいる。彼らの下にも、かなりの人数の役人がいる。また、出行班は、特に地方の出先機関の一切を管轄しており、地方税の徴収も彼らの役目とされている。
納言班の下には、独自の軍事組織として六軍と呼ばれる軍隊が所属している。東西南北と中央、それと将軍の身辺警護等を担当する将兵と呼ばれる軍の6つだ。各軍には将兵を除いて1万人ほどの軍人が属している。彼らをまずは削ろうと、ライタントは言っているのだ。それに対して、他の将軍からの侵攻ということを恐れるラグは、ライタントの提案に反対をしている。それが今の状況だ。
また、地方税や警察といった組織も、国家を支えるためには必置の機関である。税がなければ国は動けず、警察がなければ内政は混乱するばかりである。ただ、軍事警察ということにして、軍と警察を統合するという話がないわけではない。ラグはそれを指摘しつつも、消極的な対応をしていた。