4100.
「まったく、向こうのほうがまだ強かったわね……」
ベンターナが言いながらも床に落ちている袋を取り上げる。もらった皮袋ではなく、これは植物の繊維で編まれた、もっと安そうな袋だ。
「ん、まあ。まあ、まあ」
袋を開けるときに一緒にのぞき込んでいたペロースは喜んだ。
「いち、に、さん……たくさんあるわね」
袋からとぢらしてはいないものの、一目見るだけでも金貨が10枚は確実に超えているのはわかる。それだけ金をため込んでいたということのようだ。ただ、きっとこれが全部じゃないと思う。どうせまた同じように女らを襲うことだろう。
「ま、彼らがこれをくれたんなら、すこしは黙っておきましょうかね」
何を買おうか、と考えているペロースに、すこし考え込むベンターナ。
「彼らみたいなやつらをのさばらさないことも大切よ。ただ証拠も一緒にもっていかないと信用してくれないでしょうね」
言いながらも懐へとベンターナは先ほどの袋を入れる。
「これ、落とし物として官憲にもっていくわよ。そうすれば怪しまれることもないでしょうし、このあたりの情報も得られるでしょう」
「えー、もったいないなぁ」
ペロースが何と言おうが、1歩先を歩くベンターナの意思は固いようだ。ペロースも路地を抜けて広場に出るころにはあきらめて、結局一緒に官憲がいそうな所へと向かうことにした。




