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「これって、ほかの味ってないんですか?」
「味はないよ、これしかないんだ」
肩をすくめてどうしてそんなことをきくのか、という表情を店員は浮かべていた。ペロースはさらに重ねて尋ねた。
「これだけでもこれだけ売れているんだ。どうしてほかのものを作る必要があるんだい。それに、作ろうっていっても政府が認めてくれないよ。どんな種類だって調味料や原料は政府が一括して管理しているからね」
「畑の作物も、みんな持っていかれますからねぇ」
しみじみとした口調でベンターナが焼き菓子を見ながらつぶやいた。