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39.

 草案は、1時間かからずに完成した。宣言文自体、ひな形が存在しているため、それに合わせて作るだけで済んだのだ。それほど、何人も使っていたということであろう。岩屋は、ラグから草案を受け取ると、すぐに目を通す。そして、近くに転がっていた鉛筆を使い、少しばかり添削をした。添削後の文章をラグに返し、さらに目を通させる。

「これでどうだろう」

「結構でございましょう、閣下」

 ラグは目を一瞬で上から下まで通し、すぐさま答えた。岩屋は、そうかとだけ答え、清書するように命じた。ラグは一旦、一礼してから執務室から出た。部屋の中は、岩屋一人きりとなる。ライタントは、現状を確認するために視察へと出回っている。他の面々は、今や王宮の外に居た。

 岩屋は悩んでいた。一人きりで、孤独に。それは、将軍となってしまったという無自覚の責務からくるのか、はたまた将来にわたり続くであろう戦争の数々についてなのか。おそらくはその両方であろう。岩屋はそれについては自覚していた。だが、それ以外にも、戦争が終わってから、自身がどうなるのかが分からないということについて、恐れていた。もしかしたら、そこから研究を続け、元の世界に戻ることができるかもしれない。その可能性は低いだろうが、ないとは言い切れないと、岩屋は思い続けていた。だが、もう戻れないとしたら。岩屋は首をブンブンと左右に振って、その想いを消し飛ばした。胸の中ではそれを思っていても、その考えは封印することにした。そして、二度と戻れないと考えることは無かった。

 続いて岩屋が考えたのは、サザキについてだった。遺髪は、未だにポケットにしっかりと収まっている。その場所から外に出す時は、全ての将軍を殺した時であろうと、岩屋は考えていた。それはいつ来るのか、未だにわかってはいないが。少なくても、その時期が来た時、サザキについてちゃんと考える必要があるだろう。もしかしたら、DNAを取って、生き返させるというのもいいかもしれない。そこまで考えていた時、執務室の扉が開かれ、ラグが入ってきた。清書が完成したという。

 再び紙を受け取り、目を通す。さきほどの修正位置は、きれいに整えられていた。

「いいだろう。宣言はどうやって知らしめるんだ」

「放送をします。また、国中のあちこちに立札を出し、徹底的に周知するようにします」

「そうか」

 ラジオ放送をすることになっているらしい。それについてのレクチャーを受けてから、いよいよ放送本番となった。

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