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398.
「そうか」
岩屋は、それだけを言った。
「ええ、そんなことがあったのです」
ヒカイロネは、そっと呟くように言った。それがやっとだと言う感じだ。何か思い出したくないことを言っているという印象を、岩屋は受けた。
「それで、ヒカイロネは、この研究を続けたいのかい」
「研究は続きたいです」
「ゴアフラとはどうだい」
それについては、黙秘をした。
「黙っていては何も始まらないが、しかたないだろう。とりあえず、休暇をあげよう」
岩屋の提案に、ヒカイロネはわずかにうつむいていた顔をあげた。
 




