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「しかし、これはそんなところで買ったということですか」
模造貨幣という名前の記念メダルを、テッセラは表裏としっかりと眺める。細かい模様が彫り込まれているのが、指の裏から感じ取れる。ただそのほとんどは摩耗していて、元の形を保ってはいない。それだけたくさんの人に触れられて、たくさんの歴史を見てきたのだろう。
「そうだったな。もう何年も昔の話だ。これを買った時に、昔聞いた自身の親からの話を少し思い出したものだよ」
テッセラから模造貨幣を受け取りつつ、特別市長はそれを箱にしまって郷愁にふける。




