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「自分のことか」
お兄さんと呼んでいた露天商のすぐ前に立ち、テッセラが尋ねた。露天商自身も立っているが、テッセラの肩ぐらいの身長しかない。服はそれなりに裕福なのか、ピシッとしたスーツ様のものだ。ただし、それでも年季が入っているのが見てわかる。ほつれを直す余裕まではないようだ。
「そうだよ、お兄さん。お兄さんだよ。少し、見ていかないかい」
ちょうど周りには誰もいない。少しばかりはのんびりすることはできるだろう。そう思ってテッセラは机の上においてあるものに目を落とした。




