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「ここが中心地だなんて、言われなければ信じられんな」
岩屋は地図を見ながらつぶやいた。周囲から少しだけ高い、まるで丘のようになっているその一角に、確かに村のような建物の姿が描かれている。しかし、特に名前も何もなく、目立ったものは何一つない。ここへと訪れる人は、きっとよほどの物好きなのだろうと思ってしまうほどだ。
「今の政府は、ここを旧来の地区として保存する一方、新たな市街を作った。それが今の旧市街や新市街だ。まあこれも500年くらい昔の話だというから、どこまで本当かは知らないがな」
輸送班長は笑って教えてくれた。




