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スルーはその時、執務室にいた。ブラウン管のテレビ中継は、画質が悪かったが、それでも画期的な技術である。岩屋が作った技術の一つだ。だから、岩屋が現れたことも、すぐに分かったし、王宮の周りで暴動が起きたということも、あっという間に把握できた。おかげで、ここを逃げ出すという決意も、即座に行うことができた。
逃げ出す準備の最中、壁にかかった写真を眺める。自身が奉執将軍として政権を奪取した記念で撮ったものだ。
「さらば、我が夢。さらば、みんな」
写真は壁から外し、執務机の上に置いた。荷物はわずか。でも、数日とはいえ、奉執将軍となったのは事実だ。奉王将軍に認められることはなかったが。その想いを胸に、スルーは執務室を後にした。走り書きのメモを写真に添えて。




