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ふと、岩屋にいたずら心が芽生える。それはこの追跡者についてだ。田園地帯から再び少しばかりの集落へと入る頃。ツイっと岩屋は見ず知らずの路地へと入る。当然、追跡者も少し間を置いてその路地へと入ってきた。
「やあ、お兄さん」
路地の奥に3歩ほど入ってきた追跡者を防ぐように、岩屋は街道と路地の入り口あたりに立つ。
「君が昼間から僕の後ろをついてきたことについては知ってるよ。それで、僕に何の用かな。何も話してくれなくても結構、単純に君への興味なのだから、話してくれた方が嬉しいけどね」
だが、その追跡者は黙している。




