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356.
「いらっしゃい」
入るとすぐに奉王将軍が出迎える。ここで出迎えてくれるとは岩屋は予想していなかったようで、少しばかり驚いた表情をした。
「貴方がなかなか来てくれないものだから、私から呼んじゃった」
そう言いつつ、すぐそばの兵に命じて、岩屋に付けられた手錠を外させる。手首をさすりつつ、岩屋は奉王将軍に尋ねた。
「ここで手錠を外させてもいいのですか」
「ええ、もちろん。だって、あなたは私をここでは殺さない。でしょ」
それは事実だ。だが、なにか胸の内を見透かされたような、そんな感覚を覚える岩屋であった。




