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3356.
「陛下、定時報告に上がりました……」
壁際からにじみ出るかのように見える。それはスカイハルの姿だった。ただ本当ににじみ出てきたわけではなくて、入り口から知らない間に入って来たのだろう。
「そうか、さっそく頼む」
天井を見上げながらも岩屋はスカイハルへと聞いた。
「ご息女サザキ様につきましては、編み物を継続して実施。どうやら帽子を作っているようです。また、さらに毛糸を要求しており、衣服類も追加して作るものかと」
「そうか、部屋から出たか、あるいはだれかやって来たか」
「いいえ、報告までの対象の時間内に入った者はおりません」
「ご苦労だった。引き続き頼む」
「了解しました」
スカイハルが深々と頭を下げると、蜃気楼のようにスカイハルの姿は部屋のどこかへと希釈されていく。それを見届けてから扉がゆっくりと開き、そして閉じた。




