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省城の本体である奉豪将軍の王宮に近づくと、さらに岩屋は警戒を強めた。ここは最終防衛線という意味合いが強く、住民を見捨てても自分が助かりたいという将軍であれば、ここで攻撃を仕掛けてくるからだ。ただ、今までは、ここまで侵攻する間に、ほとんど決着がついていた。だが、ここではそうではない。王宮の壁を間近に見れる場所まで来ても、矢の一本、兵の一人見受けられない。
岩屋は、近くにある詰所で、車から降りて見張っている人に尋ねる。出で立ちから察するに、どうやら兵士というより警備員といった雰囲気だ。
「申し訳ないが、奉豪将軍に用がある。中に入ってもかまわないか」
岩屋は警備員に尋ねると、すぐに警備員は敬礼をして岩屋へ対して返答を行う。
「お話は伺っております。どうぞ、お通り下さい。中で、係の者がご案内いたします」
そう言われたので、必要最低限の兵だけとライタントを連れて、警備詰所を通過し、内部へと入った。




