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岩屋は、奉豪将軍の予想通りに、おおよそ2週間で省城までやってきた。不思議なことに、ここまで特に戦闘を行うことはなかった。だが、岩屋たちは、気を休める暇はなかった。罠かもしれないと思って、警戒をここまで続けてきたからだ。
「……しかし、何事もないままに省城まで来たな」
岩屋が横で車に乗っているライタントにこぼす。岩屋の3メートルほど前に、先導役の兵が先導しながら入城する。特に奉豪将軍の領民が歓呼して出迎えると言うこともなく、しかし戦いを挑んでくると言うこともなく。淡々と列は進んでいる。出発の時は意気軒高であった兵も、ここまで何事もないとだれてしまっていた。




