314.
広場全体に声が届くよう、ワイヤレスタイプのスピーカーが5つ設置されている。その全部隊が集中してみているのは、当然、将軍である岩屋であった。
「諸君!」
わずかに雑音が入るスピーカーからの声は、岩屋の声を若干遅らして伝える。反響がかなりあり、最初の一声を聞き逃したら、おそらく分からなくなるだろう。
「君らは、何のために戦う。家族のため、己のため、国のため。理由は様々だろう」
そして、岩屋は自分はどうして戦うのかを自問する。結論はすでにでていた。
「僕が戦うのは、それが最善であると信じているためだ。忘れもしない5年前。この世界にたどり着いた時。僕は1人の少女、まるで向こうの世界で死んだ娘のような少女と出会い、そしていう彼女のために一緒に生きた。だが、それは、もう叶わない。当時の奉執将軍により殺されたためだ。そのような犠牲は、もう出したくない。ゆえに、戦わなればならない。死ぬことを恐れるな、そうは言わない。挫折をするな、そうも言うまい。だが、恐れる前に、挫折をする前に、一つ考えて欲しい。君らは、戦ったか。その強大な相手を前にして、闘ったか。我々がこうして一堂に会するのは、おそらく、これが最初で最後であろう。だからこそ言おう。生き伸びろ。死ぬな。そして、闘いに勝つのだ!」
応、応、と鬨の声があちこちからあがり、否が応でも士気は最高潮へと達する。それを岩屋が確認し、一斉に号令をかけた。
「よろしい、出撃だ」




