30.
「ここかぁ……」
がたんと、台車がひときわ激しく揺れ動きだす。足元を見てみると、小さな石が、無数に敷かれていた。いよいよ省城の区域に入ってきたという証拠だ。長年敷かれ続けていて、メンテナンスも満足に行われていないせいか、未舗装のところと同じように、轍がくっきりと見える。台車はそのレールの様な轍に車輪をかませ、少し走り気味に岩屋は歩いた。焦り、とは何か違う感情が、岩屋の中に生まれていた。
轍はしばらく歩くと薄くなり、そして消えた。轍が消えてからも、さらにしばらく歩き続けると、建物が十階建て、十五階建てとどんどん縦に伸びていく。地図で見るのと、実際に見るのでは、天と地との差があることを、岩屋は実感した。住所として選んだところが、適切だったかどうかは、現地に行ってみないと分からない。だが、そこは間違いなく適切なポイントだと、岩屋は初めて実感することができたのは、住所地へたどり着いた時だった。
10か所の住所はいずれも、省城中心から遠くなく、かといって近すぎもないところにあった。高層ビルのところが3か所、商業施設が5か所、豪邸が2か所だ。豪邸は中にいる人へと渡す。高層ビルは外へ置き、商業施設はゴミ箱の中へ。それぞれ順調に置いた。
最後の爆弾を置き終わると、遠くから鈍い音が響いてきた。無事に爆発をしたようだ。ざわつきだす商業施設の中で、岩屋はにんまりとする。誰にも気づかれないように、すぐに真顔へと戻る。こうなると、あとは簡単だ。混乱の渦中にあるこの町は、さらなる混沌へと、岩屋の手によって誘われた。




