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28.

 最大の懸案事項は、こうやってあっさりとクリアされた。ならば、と岩屋はその装置を小袋に分けた爆薬全てに設置していく。洞窟にも対応できるのだから、これぐらいは出来るだろうという、推測に基づいての行動だ。一方で、電波がうまくいかないということも考えられる。その予防線として、小袋のいくつかには、時限装置を設置することにした。これも、すでに実験済みだ。おおよそセットしてから30分経過で、導火線に火が着くようになっている。そうなれば、気付かれる前に爆破するしかない。

 小袋は、10か所に設置できるように、箱へと納める。怪しまれないように、宛先が書かれた張り紙を箱に貼りつける。本当にある住所通りに、そこの宛先がはられた箱が届くわけだ。これで怪しまれないはずがない。岩屋は自信を持っていた。ちなみに、この住所は、施設の地図を見ながら覚えたところだ。そのため、間違いないと自信を持っているわけだ。

 だが、もしも小包として配送業者に持って行ってもらうとすると、中の爆薬が発覚する恐れがある。それ以前に、お尋ね者の岩屋京士朗だと気づいてしまうことが考えられる。それは、最も避けなければならないことだ。なので、岩屋自身が持って行く必要がある。そう判断した。


 省城へは、何往復する必要があるかどうかわからない。大まかに、10か所の小箱だから、まとめて持って行けば、1回で済むことも考えられる。岩屋は、大きさを測り終えると、持って行くための台車を調達することとした。できるだけ簡潔に、そして素早く終わらせる必要があるからだ。

 台車は路銭を使い、近くの商店から買った。商都のため、馬から蒸気自動車から大八車まで、物を持ち運ぶためのものは、ほとんど何でも売っている。代わり物としては、鳩まで売っていた。一応伝書鳩ということらしい。だが、岩屋が欲しいのは台車だ。それもとにかく丈夫な物が欲しかった。店主によれば、鉄でできたものが丈夫で、ちゃんと整備すれば数年は持つらしい。そういうことなので、幾らか払い、台車を買うこととした。


 秘密の場所へと戻り、それから箱を台車に積み上げる。ふぅと息を吐くと、最後の一つを上に載せた。これで、全てを載せ終わったわけだ。10個の小箱は、整然と台車に安定的に載っている。箱の大きさの関係で、下段は3行2列の6つ、その上に2行2列の4つが置いてある。これらは、倒れたりしないように、紐でしっかりと縛られた。ギュっギュっと何回か結び目や紐の張り具合を確かめて、岩屋は一回うなづいた。

「じゃあ、行こう」

 サザキの遺髪をしまっている右ポケットを、そっとさする。まるで、頭をなでるかのように。そして岩屋は、省城へ向けて、長い長い旅をはじめた。もう、二度と振り返ることができない旅へ。

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