27.
選別は、2日ほど続けて行った。それほど、量があったということだ。だが、岩屋はそれを不眠不休でやりとおした。必要な作業、それも重要な作業なほど、岩屋は燃えあがるのだ。そのため、2日も食べることも、飲むことも忘れてやり続けることができた。
それが終わった時点で、約3分の1程度に、爆薬は減っていた。これなら、省城を全て吹き飛ばすということはないだろう。岩屋はそう思って、次の作業を行うことにした。次は、これらを分解して、移送し、さらに設置すると言う大仕事だ。一人で出来ないかもしれない、でも、一人でしなければならない。
初めのうちは、誰かと組むと言うことも考えていた。だが、岩屋はその考えを捨てた。有象無象の人らが、岩屋の懐を狙っているからだ。そのことに気づいた岩屋は、誰の手も借りないと言うことを、心に深く誓った。だから、今では一人でするしかないのだ。
さて、最大の難問である設置について、岩屋は一つの答えを持っていた。それは、別時空から来た、すでにこの時代から100年も未来に出てくるかどうかという知識の数々のうちから選んだものである。電波を利用し、遠隔爆破するという手段は、この時代では夢物語に等しい。まるで魔法の様だと言われること請け合いだ。だが、岩屋はそのことの知識を兼ね備えている。故に、それを実行することは可能だった。
ならば、何が問題なのか。それを言われたら、大きく2つある。まずは材料だ。材料は小型携帯と言っても、あまり小さくなくてもいい。少なくても受信機と導線があれば、事が足りる。特に受信機は、この世界にはまだない。だが岩屋は、すでに頭の中でできると確信をしていた。これらを使い、簡単に言えば、携帯爆弾を作ると言う話だ。詳しい作り方は、長くなるので省く事にしよう。もう一つの問題は、この世界が、本当に電波という存在があるのかという証明だ。
電波がある証明については、一度だけだが、岩屋は研究を試みたことがある。まだサザキが生きている頃の話で、ライタントと岩屋の家の間の無線の送受信実験だった。この時には、距離にしておおよそ300メートルもないほどではあるが、はっきりと聞こえた。もっと遠距離だとどうなるのか。岩屋は、その研究を行うこととなった。
集めた資料によれば、省城の大きさは、おおよそ5キロメートル四方らしい。その範囲に収まることが分かっているため、電波の感度実験は、5キロメートルと設定した。送受信のための装置は、研究した時に開発したものをそのまま流用することにする。本を持ってきたのは、そこに設計図が描かれているためだ。
その実験は、5キロメートルほど離れた洞窟の中に、受信機をセット。離れて送信地点に至ると、送信機を起動し、遠隔で爆破を行う。当然、1発目から、ドンっという激しい音とともに、地響きが響き渡る。遠くから、鳥が騒がしく飛んでいくのが、はっきりと聞こえる。
「成功だ……」
前に成功した設計図だから、当然成功する。それであっても、成功するという喜びは、何物にも代えがたい。ぽつりとつぶやいた言葉は、爆発音にかき消され、消えていった。




