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26.

 岩屋の計画はこうだ。奉執将軍がいる省城は、すでに場所が分かっている。大量の爆薬を、省城へと担ぎ入れる。散発的に爆破を繰り返しつつ、省城中心の城へと侵入。奉執将軍を探しつつ、兵を倒す。見つけると………あとは、その時考える。そう言う計画だ。

 これでうまくいくかどうかは分からない。だが、これぐらいしか、岩屋は思いつかなかった。思いつかない以上、これでいくしかない。誰かに相談なぞ、もってのほかだ。

 そのため、もう1人で行動するしかない。岩屋はすでに腹をくくっていた。そのための材料も、十分に集まりつつある。そろそろ頃合いかと、岩屋は思っている。そのため、定宿としているここを引き払うこととした。


「なんと、もう行かれるのですか」

 ここの施設長に、出ていくことを告げると、驚かれる。もう出ていくのかという感情と、やっかい払いができるという感情の二つが、複雑に入り乱れている顔をしている。だが、若干もう出ていくのかという感情が優勢のようだ。だから、一応は引き止める。

「ええ、ここにはお世話になりました。しかし、長逗留しすぎたようです」

「そうですか、いやはや残念です。もっといてくださっても結構なのですよ」

「いえ、どうにも私は旅をする癖があるようでして。あまり長い間一か所にとどまるのは好きではないのです」

「なら、引き止めはしません。ああ、これを」

 そう言って施設長は、机の鍵がかかっている引き出しを開け、皮袋を一つ岩屋に渡す。ジャラリと小銭のような音が聞こえる。かなりずっしりとした、そんな様子だ。

「路銭です。今まで、ここに居て下さってありがとう。これからも、達者で」

 施設長が立ち上がり、岩屋と握手を両手で交わす。岩屋も片手ではなく、施設長の手を包み込むように両手で握手をした。

「ええ、施設長も」

 岩屋は、お礼をさらに二言三言言ってから、施設から出た。


 出た先は、物が置いてある秘密の場所だ。そこは、近くの森の中の、今は使われていない鉱山の坑道だった。何もないところだったのに、今では、木箱がそこここに置かれている。幅3メートルほどの坑道だったところに、今や人一人がすれ違えるかどうかぐらいの隙間しかない。

 これほどあれば、省城一つまるごと灰燼に帰すことができるだろう。岩屋は少しばかり考えた。省城のあちこちに爆弾を仕掛け、遠くから起爆させることができるならば、自身の命は助かるだろう。だが、それでは復讐を果たすことはできない。自らの手で、奉執将軍の息の根を止めること。それこそが、岩屋にとっての復讐そのものだ。それをするためには、遠くから起爆させても、省城まるごと壊すと言うことは出来ない。

「……半分ぐらいは残しておくか」

 岩屋は、そう言いながら、どれを残しておくかの選別をはじめた。時間なら、いくらでもあった。

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