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岩屋たちが泊っていた宿舎から急いで向かうとおおよそ5時間、ゆっくり向かうと12時間。それほどの距離が、今の岩屋と奉勝将軍の間にはある。それゆえに、奉勝将軍は逃げる機会は今しかないと考えていた。よし、逃げようと考え、荷物をまとめているところに、部下の一人がやってくる。
「将軍、何してるんですか」
「うるさいっ、俺は戦略的な転進をするだけだ」
「転進って……どこにですか」
「川の向こうだよ」
さすがにそこまで奴らは追いかけてくるまいと、奉勝将軍は考えていた。来るとしても、死んでからだと。




