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「夜風、気持ちいいものでね」
岩屋がライタントに笑いかけながら話す。だが、ライタントはピクリとも笑おうとしない。
「このままここにおられては、明日の行軍に支障が出るのでは?」
「確かにそうだな」
岩屋はそのまま苦笑いをしながら、ヒカイロネに言う。
「では、先に僕らは降りるとしよう。ヒカイロネさんも、早めに降りなさいよ」
「はい。でも、もうちょっとしたらおりますね」
分かった、と岩屋は告げ、ライタントを先頭にして、櫓の階段を降りていった。それからしばらくの間、ヒカイロネはそのまま櫓から奉勝将軍の王宮を眺めていたが、なにやら吹っ切ったようにして、櫓から降りた。




