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256.
「シャホールは、平和のためのものだと、今も信じてます」
「…だろうな」
岩屋は、櫓の手すりに両手を置き、それで体重を支えつつ、ヒカイロネの話を聞く。風が不意に止む。それにともなって、ヒカイロネの毛先も、穏やかになり、そして動かなくなった。
「僕自身、シャホールは子供のためにあると信じている」
「では、どうして兵器として扱うのですか」
「それが有効だからさ」
岩屋は体の向きを変え、右手を手すりに置いた。ヒカイロネと岩屋は目線が交る。とっさにヒカイロネは、視線を逸らした。




