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22.

 敵はいよいよ屋上の入り口まで来たようだ。かなり騒がしい声が響き渡ってくる。その中で、いよいよ岩屋はライタントとサザキを逃がすことをあきらめたようだ。その代わり、彼らを守るために、命を張るつもりのように見える。

「……合図とともに、総攻撃をかけます。いいですね」

 岩屋がライタントに同意を求めると、コクンとライタントはうなづく。その目は、攻め込まれたという怒りに燃えあがっており、奉執将軍がやってきたということに対しての怒りのようだ。そのために、ライタントは階段下へ爆弾を火をつけながらも放り込み続けており、そのたびに、下から悲鳴が聞こえてくる。

 だが、攻勢もあまり長くは続かなかった。相手は、味方の屍をも乗り越えてくるような連中である。これほどの攻撃であったとしても、全滅していない時点で、遠からずしてやってくるのは目に見えていた。岩屋戸ライタントが、その先頭に立っている連中に矢を射かけようとした時、岩屋に対して声をかけられる。

「攻撃、止め!」

 その声は、先ほど聞いた声そのものだった。階段から昇ってくる足音も、他の兵とは明らかに違っている。重みがあるその足音は、地響きとはなにか違うような感じだった。さすがに馬に乗っていないが、それでも頭一つか二つ分ぐらいは高いところにある。そのおかげで、はっきりと将軍の姿を見ることができた。

「…岩屋京士朗殿と御見受けする」

「いかにも、僕が岩屋です。何かご用でしょうか」

 矢を構え、油断なくにらみつつも、岩屋は奉執将軍に答える。奉執将軍は、射かけられることが怖くないというふうに、堂々としている。その話をしつつも、サザキは奉執将軍に見つからないように、岩屋の後ろに隠れていた。だが、高いところから見下ろされると、よく見えるものである。サザキは、奉執将軍にみつかってしまった。

「む、その娘、見覚えがあるな……」

 びくっと震えると、恐々と奉執将軍を見上げる。目と目があった瞬間、どうやら思いだしたようだ。

「おお、そうか。思い出したぞ。数年前、蒸発した奉王将軍の娘ではないか」

 その言葉に、事情をよく知らなかったライタントが驚いた。

「奉王将軍の娘…?」

「む、知らぬのか。この娘は、奉王将軍の娘、サザキ・カールルイ・スプリ嬢である」

「サザキ、本当なのか」

 ライタントが思わず矢を降ろし、サザキに聞く。サザキは、うなづいて、その意味を知らせた。それは、この前、岩屋に話した内容と同じ事であった。


「ということは、本当に奉王将軍の娘なのか。そして、殺されそうになっていると」

 ライタントの言葉に、はっきりとうなづく。奉執将軍は、どうしたものかと考えているようだ。殺すのは、とても簡単なことだ。だが、それをしていいものかということだ。ここで奉王将軍へ恩を打っておくと言うのも、いいかもしれない。そこまで考えた奉執将軍は、サザキに提案をする。

「我は、サザキ嬢を殺そうとは考えぬ。どうだろう、共に奉王将軍の元へと行くのは」

 だが、奉執将軍が一歩足を進めると、サザキは一歩下がる。だが、2歩ほど歩くと、端まで来てしまった。もう、決断する時が迫っていた。奉執将軍はサザキを連れていくと決めたようだ。だが、それと同時に、最大の目的である岩屋の確保にも動いた。部下に手で指示をして、サザキへ集中している岩屋とライタントの武器を取り上げ、その上で床に3人がかりで押し倒した。

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