192.
全員がかたずをのんで見守っている中、弓手は見事に、対岸の木の1本を打ち抜いた。
「見事だ」
岩屋が褒めると、弓手は一礼して岩屋へと敬意を表した。すぐにライタントが、弓の入り具合をみて、外れないことを確認した。そして、木こりの中で一番身軽な者をヒモを通して、向こうへと人を送ることができた。
「準備は整ったな。では、かけるとしよう」
橋のかけ方は、意外と簡単だった。向こうに渡っている木こりが手伝い、細い紐から徐々に太い縄へと変えることができた。そして、2本の縄を平行に結ぶと、その間に両岸の木にしっかりと結える。それから、すでに準備しておいた木の板を何十枚と別の縄へ結び、最初の縄へと引っかける。
それ以外にも、さまざまな順番があったが、実用に耐えることができる木製の吊り橋が出来上がった。
「うむ、これでいいな」
「ありがとうございます」
近隣の人々は総出で、岩屋へ礼を言った。
「当然のことだ、民のことを考えなければ、将軍としてふさわしくなかろう」
と、岩屋がそこまで言ってからふと気付いた。
「そういえば、本来の将軍である奉葎将軍はどうしたのだ」
「あの方は、ろくでもない方です!」
すぐ近くにいた人が何やら陳情をはじめた。




