185.
奉王将軍と会ってからもう1年はとうに過ぎている。その間、一定の間隔で報告を受け取っていたのだが、それが嘘だったのかもしれない。元々ラグは上昇志向が非常に強い人物だ。将軍職として、1国の主となれば、その気持ちもおさまるかと思ったが、どうやら岩屋の読み違いだったようだ。それがもとで、領民の怒りを買い、こうして反乱という形で噴出したのかと、考えた。
「部下の不始末はある時の不始末とも言うしな。仕方ない、一度視察へ向かうとするか」
「では、そのように手配を」
「ああ、それと、シャホールの軍勢はどれぐらい出せれるかを確かめておいてくれ」
ライタントが執務室から出ようとするのを、ピタリと止め、岩屋へと振り返る。そして、おずおずと確かめるように聞き返す。
「シャホールの軍勢ですか」
「そうだ、内乱となれば、護衛をつけていかなければなるまい?」
「……分かりました、ヒカイロネと協議してまいります」
「よろしく頼む。出発はできるだけ早いのがいいだろう」
そう付け加え、岩屋の前からライタントは出て行った。
実のところ、岩屋はシャホールを護衛として使うつもりはない。軍勢と呼んだのも、兵の代わりとしてどこまで現状で使えるかを実地でテストするつもりだからだ。何かしらのバグは、当然織り込み済みである。また、操縦手も何人か連れて行くことになるだろう。それらを踏まえても、今までのような100人単位での視察にはならないと、岩屋は考えていた。
そして、ライタントが後に持ってきた報告書により、最終的に60名程度とシャホールの実験機3体を持っていくこととなった。




