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さらに半年が過ぎた。研究は一応進んではいる。岩屋の研究はゆっくりとではあるが、着実なものだ。
「いよいよ稼働だ」
「そうですね、いよいよといったところでしょう」
岩屋が感慨深げに、すぐ横に立って装置を見上げているライタントにつぶやいた。
「これで、一気に進んでいくだろう。この世界のコンピューターの始まりだ」
今までのような、手作業でスイッチを入れ、特定の動作だけを行わせるというタイプではなく、汎用タイプのコンピューターは、この世界では、今のところこれしかない。岩屋は、このコンピューターに名前を“彼女”と付けた。岩屋がいた世界でのENIACよりも、数段劣るようなできであるが、これで精一杯といったところだ。




