135.
祭りの会場を後にすると、岩屋たちが泊っているホテルへ、奉王将軍が直々に送ってくれた。そして、玄関先で、岩屋たちへと声をかける。
「それでは、また」
「ええ、また。河から上がってきたとか、空から降りてきたとか関係なく、あなたはもう一度僕たちと出会うことになるでしょうね」
「そうでしょうね、その時を、とても楽しみに待っているわ」
命を賭けた戦争をするとすでに宣言しあっている身だ。何があってもおかしくはない。だが、表向きは、あくまで表向きは友好関係であるということを示さなければならない。それは3人が全員理解している共通事項のひとつであった。
見送った後、奉王将軍は馬車に乗り込んで、ホテルを後にした。その後ろでは岩屋とラグがホテルへと入っていくのが、ガラス越しに見える。それをななめ後ろに見つめつつ、奉王将軍は、すぐ横にいる部下に言った。
「彼ら、特に岩屋という奉執将軍は、古人に言う、戦乱を巻き起こす人物だという人に見えないわね」
「まことに。穏やかな方でありました。しかしながら、古人の予言は、今のところ成就しております。あなたが最後の奉王将軍であるということも、おそらくは……」
「ええ、そうでしょうね。それでも、私は嬉しいのよ」
古人の正確な予言は、あの劇では示されていない。本当は、空から人が降りてきたとき、地は血を求め、人は人を求め、天は魂を求める。その最中に王将軍は皆倒れ、全ての将軍は1人となり、他の者は追従する。それにつられるように、川の向こうから人がやってきて……という筋である。
最後には、最後の将軍となる人物は倒され、川の向こうの人が最高位となり就くとある。
「血沸き、肉躍るような戦争なんて、なかなかできないからねぇ」
心の底から楽しんでいる声で、奉王将軍は部下に語っていた。
 




