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何も言わない。ただ、ゆっくりとした動作で鎮郷将軍は机の上へと手を伸ばす。ゴーンドーレスの後ろにいる兵士らはその動作を見て銃を構えるが、ゴーンドーレスは発砲を許さない。右手を頭の横まで上げて、全ての動作を止めさせた。
「最期に、私の我儘を聞いていただけますか」
手に銃を持ち、それを緩慢な動作で鎮郷将軍は自身の右こめかみのやや下に突き付けた。
「……何でしょうか」
ゴーンドーレスは妙に慎重なものの言い方をする。これが彼の最後と分かっていたからだ。
「どうか、私の部下らを罰しないでいただきたい。彼らは私の命に従った、ただそれだけなのですから」
「極力、お約束いたしましょう」
「ありがとうございます」
遺言、そんな重たい意味を持つ言葉は、確実に果たされる、というものではない。それを知っていながらもゴーンドーレスも鎮郷将軍も会話を交わした。
そして、世界に硝煙の香りが広がった。




