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106.
何も奉王将軍との会話が分からないまま、翌日を迎えた。ラグの話通りに、その日は動いていた。そして、とうとう奉王将軍と出会う時がやってきた。
「初めまして」
馬車から降りると、すぐに女性が手を伸ばしてくる。握手のためだ。まず、ラグが降りる。初めまして、とラグが挨拶をする。それから岩屋の番だ。正装の服を翻し、颯爽と馬車から降りる。
「初めまして」
岩屋もラグと同じようにあいさつを交わした。だが、握手をし、パッと顔を見ると、一瞬固まった。その顔は、まさに死んだ妻と生き写しであったためだ。
「どうかされましたか?」
だが、妻ではない。そう思いなおし、奉王将軍が心配そうに聞いてくるのに笑顔で答える。
「いえ、何でもありません」
「そうですか。ではお二方ともこちらへ」
そして、奉王将軍とお付きの人と一緒に、廊下へと向かった。




