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切り文字屋

〇村内、切り文字屋

   モヒカン刈りで化粧をした山上が糸鋸を切っている。

   静子が釣銭を持ってくる。


静子「おはようさん、今日ライブ?」

山上「おはようございます。ええ、6時からミューズホールです。

 4時に上がっていいですか?」

静子「いいわよ。まりっぺも行くんでしょ」


山上「なちちゃんと四条で待ち合わせ言うてました」

   山上、顔を上げニコッと笑う。

   ヘビメタの気味悪い厚化粧。


〇マンション、408号室 内、夜

   居間で松平が帳簿をつけている。

   静子が夕食の支度をしている。


松平「今月も厳しいな。おくだ木工もう少し待ってもらおう。

 いうてももう4か月や」

静子「山上君にやめてもろうて私が糸鋸切ろうか?そしたら

 私らだけやもん少しは楽になるやろ」


松平「そやかてとんがり頭でバイトでけるとこここしかあらへんから

 山上君もすぐには辞めてくれへんで、それにお前糸鋸切れるか?

 何年もやっててこれっぽっちも切ったことないやろ」


静子「そうなりゃそれこそ必死でやりますわいな」

松平「そやな、お前が店見てわしが外売りに出るこれがベストやな。

 山上君とまりっぺがはよくっついて山上君が故郷に帰るように祈ろかいな」

静子「それしかないな」


〇ミューズホール、内、夜

   強烈なサウンド。若者でごった返している。

   4人のバンドでドラムをたたいている山上。

   とんがり頭の気味悪い化粧でにっと笑う。


〇シネマ村、切り文字屋

   ホタルノヒカリが鳴っている。

   山上が戸締りをしている。

   静子、銭袋を持って、


静子「じゃ、入金行ってくるからね」

山上「はい、あとやっときます」

   

   銭袋持って歩く静子の後ろ姿。


〇村内、関所、夕

   静子、藤屋の社長と立ち話している。

藤屋「あかんやろ?」

静子「ぜんぜんだめ」


藤屋「うちも全然あかんわ。先月でタワーのほうは撤退や。

 人件費も出へんしな。家族でこじんまりとやるのが一番やで」

静子「そういうてもなかなかやめさせられへんし」


藤屋「そんなことない、くびにしたらええがな」

静子「そうもいかへん、生活かかってるやろし」

藤屋「ほなしゃない、しっかり稼いで給料払うてやり」


静子「ほんまや、社員のために社長が休みなしで働いてるみたいや」

藤屋「ほんまやで、借金までして。そやけど今が一番しんどい時や。

 そのうちきっとええことある。今しっかり辛抱しときや」

静子「おおきに」

   静子、涙ぐむ。

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