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痛快都市伝説 the Reverse  作者: 玄瑞
第二章
11/44

舶来

 学校から帰ってきてはパソコンに向かい、インターネットで工作作業に励む。

 この充実感のかけらも無い作業が水曜日まで続いた。

 これがCG作成やソフトウェアの製作だったなら違っていただろう。趣味にもなるし、将来につながることもある。しかし俺がしようとしているのは、都市伝説の流布なのだ。虚しい。

 流布されるべき都市伝説は、朝に出かけて夜遅くに帰って来る。どこを流れ歩いているのやら。

 帰ってきてからは、作業の状況を確認して細かく注文をつけてくる。

 露骨な宣伝に見られるから私の名前はまだ出すな、文体が同じにならないようにしろ、書き込む時間帯がワンパターンにならないように、褒め方が足りない、話をうまく振れ、スレッドを落とすな、質問に答えた人へのお礼を忘れるな、時々ほどよく貶してリアリティを出せ、でもやりすぎるとお仕置きです、と実にうるさい。

 睡眠時間を削られた頭で、自分でやってくれ、と幾度となく思った。


 木曜日である今日は、虚しい作業から解放される日となった。

 パソコンのキーボードで文字を打ち込むところまでは、これまでと変わらない。異なるのは、作業が玄関のチャイムによって中断されたことだ。ナギーは家にいる。ノートパソコンを前にして、打ち込まれた文面を見て考えこんだままだ。

 インターフォンのモニタを見に行くことにする。

「レイキが……」

 部屋を出てすぐに、自室のドアの隙間からナギーの声が漏れた、

 戻ってドアを閉めた。十月の第一週だから、冷気と呼ぶほどでもないのに。

 機器の前にたどり着く。

 画面には、七歳か八歳ぐらいの女の子がジャンプするたびにアップになって映っている。その子が振り向いて引き下がると、セーラー服姿の少女が映った。こちらは高校生ぐらいだ。

「どちらさまですか」

「突然伺って申しわけありません。わたくし、ワタライといいます。そちらに、赤い髪の毛をした女子高校生がお邪魔しておりませんでしょうか」

 なぜ知っている?

「どういったご用件でしょう」

「彼女に用がありますの。そちら様にご迷惑はおかけしませんわ」

 話でも聞いてみようか。

 女子高生らしくはないが、丁寧な話し方だ。あいつについてまともな話ができそうな相手は、まずいない。現段階では――いや、多分どの段階でも――ネットは当てにならない。

 玄関に赴きドアを開けると、インターフォンのモニタに映っていた二人の女の子が待っていた。手前に立っている女子高生が俺の姿を見て会釈をすると、彼女の左手側後方で、小さい子が倣うようにお辞儀をした。

「ああ、あがって。ずんずんと」

 いつの間にか、ナギーが俺の後ろにまでやってきていた。知り合いらしい。

「あなたのお宅ではないでしょう? 久坂様、お邪魔して宜しいでしょうか」

 ワタライと名乗った少女が、ナギーに的確な指摘をするとともに俺に尋ねてきた。丁寧な物腰だが、口調は力強い。どこか逆らいにくいものがある。

「は、はあ。どうぞ」

「それではお邪魔いたします。入りますよ」

 客の女子高生が振り返って言った。

「おじゃましますう」

 キョロキョロと見回しながら、連れの子が靴を脱いで上がる。一足の赤く小さなスニーカーが玄関に転がった。

「ちゃんと揃えなさい」

「はあい」

 ワタライさんが注意すると、連れの子が素直に従った。その子は持参の風呂敷包みを左腕で抱えたまま、右手で靴をそろえた。

 廊下を並んで歩く。ナギーが先頭に立って案内する。

「リビングで正座しても疲れるから、ダイニングでいい?」

 随分と手を抜いたもてなし方だ。

「お構いなく」

 俺の前を歩くワタライさんが答える。

 彼女の背丈はナギーと同じぐらい、同級生の女子連中と較べても平均的だろう。ただし頭頂部で丸く束ねられた黒い髪が加わるので、トータルではそれより若干高くなる。この髪型を何と呼ぶのかは知らない。

 ナギーがリビングのドアを開けると、連れの小さい子がいち早く中に入り込んだ。

 リビングとダイニングの明かりを点けながら尋ねる。

「妹さんですか?」

「いえ、わたくしの従者です」

 ジュウシャ? はっきりと言った。従妹いとこのジュウマイとは違うみたいだ。お供の従者を連れて来るとは何者なのか。幼い子供を従者にしているのも奇妙だ。

 よく考えれば、ナギーと話をしているのも不思議だ。シンクロしていないとできなかったはず。想像したくはないが……この二人も物の怪、都市伝説とかいうんじゃないだろうな。

 客の少女にダイニングの椅子に座ってもらう。俺がお菓子を用意する間に、ナギーが急須でお茶を淹れた。いつのまに場所を覚えたんだ。占領完了か。

 赤い靴を履いてきた子は、リビングの棚の上にある置物を手にとって眺めている。風呂敷包みはテーブルの上だ。

「赤靴、人様の家の物を勝手に触ってはいけませんっ!」

 先程より強い叱声が飛んだ。

「はあ~い」

 赤靴と呼ばれた退屈そうな女の子のために、自室から携帯ゲーム機を持ってくることにした。

 赤靴少女が指先でテニスの試合を開始するのを見届けると、俺がワタライさんに疑問をぶつけた。

「アカクツって、そのまんま過ぎるな。他に呼び方は……」

 といっても、外見からは他の渾名が思いつかない。黄色いパーカーを着てキュロットを穿いた、ごく普通の服装だ。ボブカットの髪型もごく普通。顔はテレビCMの子役にできそうな感じだが、渾名にできるほどの際立った特徴はない。

「あの子は式神ですから、迂闊うかつに名付けるとそれに性格が引きずられてしまいますの」

「シキガミ?」

「陰陽師が使役する鬼、西洋ならば精霊ですわね。式札――専門の職人が文字通りに精魂込めて作った紙に魂を宿らせて、さらに命を吹き込んで生み出しますの」

 やっぱり物の怪だったのか。

 それに陰陽師。日本のエクソシストだったな。それが実在するとは。……幽霊もどきもいるんだし、そんなものか。ますます異世界だ。現実世界には当分帰れそうもない。

「えーと、陰陽師がここに来たということは、お祓い……ですか?」

 椅子に座りながら尋ねる。

「いいえ、違いますわ。ナギーとは共通の目的がありますから」

 大会とやらのことなのだろうか。それなら別にいいのだが。ハニートラップとリアル霊感商法のコンボだとしたら、怖ろしい。

「ふ~ん……。祓ってもらいたかったの?」

 隣に座ったナギーが横目で睨んでくる。

「滅相もない。大変楽しい毎日を過ごさせていただいております」

 俺がこの世から掃われてしまうところだった。

 俺の様子を見て、ワタライさんがナギーに尋ねる。

「この方は?」

「私の記録係」

 その返事を聞くと、俺のほうに向き直った。モデルと呼んでも不自然でないくらいに整った顔が、愁いを帯びている。

「そう、それはご愁傷様です。あなたの苦労はとてもよくわかりますわ。御自分のお体をいたわってくださいね」

 はっはっは。初対面なのに、あなたは実によくわかっていらっしゃる。実体験でもおありですかな? ……ってねえよな、普通。そんなもん。

「これはどーも。ところで俺は席を外した方がいいですか、ワタライさん?」

「その必要はございませんわ。後でナギーが話すから同じことでしょう」

 ナギーが頷いている。

「それから、わたくしのことは『アニー』と呼んで下さい」

「アニー?」

 ハーフにもクォーターにも見えない。皮膚は少し白めだが、瞳も髪も黒い。日本語の発音にも不自然なところはない。生粋の日本人に見える。

 自称アニー・ワタライが、テーブル上の隅に置いてあるメモ紙の束と鉛筆を取り寄せて、何か書き出した。このメモ紙は、普段帰りの遅い両親が伝言を残すためのものだ。

 書き終わると、向きを変えて差し出してきた。

「これがわたくしの名前です」

 紙には『渡会わたらい阿仁女』と書いてある。

 姓にはふりがなをつけているが、名にはつけていない。つけなくてもわかるし、つけたくない理由もなんとなくわかる。年齢的に、ディズニーよりブロードウェイの方がまだマシだ、というのも同感だ。宮崎さんと結婚したら面白いことになりそうだ、などと思ってはいけない。笑いが止まらなくなっては失礼ではないか。

「はあ、なるほど」

 俺が相槌を打つと、アニーさんが念を押すような口ぶりで言った。

「『アニーさん』とは呼ばなくて構いませんから。『オニイさん』と間違われるのは心外です」

 『オニイさん』と間違われる……?

 正面に座る少女を少しの間だけ観察する。

 顔も髪型も、声も身長も名前も、女性のものだ。残るは、高価そうな生地で作られているセーラー服に覆われた部分……。

 しかし、そこは見てはいけないところだ。

 紳士たるもの、マナーを守るのは当然じゃないか。

 そう、俺は女性の胸を見たりなどしていない。

 きわめてデリケートな何かに納得したところで、この少女のいうとおりにする。

 アニーでも『兄ぃ』になるよな、とも思ったが、アクセントに気をつければ問題はないだろう。

「そうですか。わかりました、アニー……って何か変な話し方だな」

「タメ口でいいよー。同じぐらいのトシだよねー」

 ナギーが口を挟んだ。

「そちらが自然ですわね。そうしてください。わたくしは慣例上、作法を守らねばなりませんのでこのままですが」

「それじゃー遠慮なく。あ、俺の名前はこれ」

 受け取ったメモ紙に今度は自分の名前を書いて、アニーに渡した。

「雅弘さん、ですわね。そろそろ本題に入ってよろしいでしょうか」

「どうぞ」

「今日ここへ来たのは、ある相手と戦うためにナギーの手を借りたいからなのです」

「私の?」

 ナギーが答えた。

「本当は頼みたくないのですが、わたくしは水上での戦いに不得手なところがありますので……」

「嫌だったら別の人に頼めばいいんじゃないかなあ。オンミョージ仲間がいるんでしょ?」

 陰陽師は他にもいるらしい。

「貴女には貸しがありましたわよね? ナギー」

 アニーが質問に質問で切り返した。

「何のこと?」

「しらばっくれるだなんて、どこかの誰かさんみたいに図々しいですわね。ピアノです、ピアノっ。あの耳が腐りそうなヘタクソな演奏は貴女らしいですが、アップロードしたわたくしが弾いたみたいに思われるのは我慢なりません」

 七不思議のピアノか。虐殺用の兵器製造に駆り出されたらしい。

「そーいえばそんなのあったね。忘れてた」

 とぼけた調子でナギーが言った。

「もう忘れるなんて。感想が欲しいと京都まで何度も来るものですから、大事なことなのかと思ったら」

 京都まで行ったのか。暇だったんだな。金が無いから電車にはタダ乗りしたのだろう。

「いえいえ、感謝しております。感想も専用レコーダーも大変役に立ちました」

 抜け抜けとナギーが言ってのける。その表情はにこやかだ。

「わざわざ言霊ことだままで込めてあの酷評と罵詈ばり雑言ぞうごんをプリントしたのに、まるで応えていませんのね。図太いというか、自惚れが過ぎるというか。もしや漢字が読めないのでは……」

 陰陽師アニーが呆れた表情で嘆じた。言霊というのは呪文か何かの一種なのだろう。プロの仕事は丁寧だ。火力をきちんと上げてくる。被害者は堪らないな。

 ナギーが呑気な口調で言う。

「やだなあ。隆起りゅうき豊穣ほうじょう艶麗えんれい逆鱗げきりん扼殺やくさつ暴虎馮河ぼうこひょうが一触即発いっしょくそくはつ阿鼻叫喚あびきょうかん狂瀾怒涛きょうらんどとう。全部読み書きできます。それで相手は?」

 片方の眉をぴくっと動かしてからアニーが答える。

「外国の都市伝説が流入してきています。今回はアメリカあたりですわね」

「へえ~。外国にもあるんだな」

 俺が感想を漏らした。

「オンミョージって外国の都市伝説とも戦うの?」

 ナギーが尋ねた。

「当然ですわよ。どこのものであろうと、生者に危害を加える霊的存在を封じるのが陰陽師の役目です。海外の悪魔や邪霊などを日本に蔓延はびこらせたりはしませんわ」

「なかなか頼もしいな」

 俺のその返事に、アニーが我が意を得たりとばかりに意気込んで話し出す。

「ええ、これまでにわたくしたち陰陽師が倒したものは数知れずあります。ドイツ系というのもありましたのよ。これはわたくしが見事に調伏いたしました。……この話、聞きたいですか? 聞きたいですわよねっ? 顔にそう書いてありますわっ」

 身を乗り出して尋ねてくる。湯のみに当たりそうで危ない。

 それから、俺はそんな顔をしていない。武勇伝を語る奴は一人で十分だ。モノノケ絡みはこういうのが多いのか?

「話長いから言わなくてもいいよー」

 先取特権さきどりとっけんの権利者が言った。

「帰りが遅くなるの、まずいんじゃないかな」

 俺からも言った。

 すでに夕刻だ。ここからだと京都に着くのは夜になる。

 アニーはリビングの棚にある置時計を見て、ため息をついた。

 その前方の床では、従者の赤靴がうつ伏せになってゲーム機の画面を睨んでいる。赤靴の左親指が円を描いた。一秒もかからない動きだった。

「残念ですわね。今日も一体沈めて、話題には事欠かないのに……。相手は『バミューダ』です。『バミューダ・トライアングル』。その一部が日本近海にやって来ています」

 思い出した。これは聞いたことがある。アメリカのフロリダ半島南端と大西洋の島と中米の島を線で結んで、三角形になるように見立てたものだ。その中に入ると船や飛行機が消えてしまう、という都市伝説。乗組員だけが消える話もあるらしい。俺が知ったのは漫画の中古本からだ。

「島が動いてくる……わけはないよな。雨雲がやってくるのかな」

「目撃情報によると、もっとありきたりで陳腐な形態ですの。それが沢山。封じても自慢にはなりません。話す気にもなれませんわ……」

「なぜ日本に?」

 ナギーが尋ねた。

「それは陰陽寮で調査中です。気候変動との相互作用で流れ着いたか、それともグローバリゼーションの影響なのか……。アニメにあやかって伝説強化を図っているのかも……」

 阿仁女と名乗った客人が答えた。『アニメにあやかって』って。この子も自信過剰なのかな。自称美少女みたいに。

「あー! 電池が危ないですう~」

 赤靴が危機を告げた。

 俺が席を立って様子を見に行く。ゲーム機は緑のランプを点滅させていて、電池残量が少ないことを示している。充電用のACアダプターを持ってくることにした。

 長いコードの先にある黒いプラグをコンセントに差し込む。充電しながらでもゲームはできるが、中古のせいか、動作は不安定になりがちだ。

「どうもですう」

 ポニョポニョとした頬が緩んでいる。うまくいったらしい。

 再び席に着く。

「あれに弱そうね。でも重いしな~」

「船に乗せていけばどうということはありません。港までは配達してもらえばいいですわ。それくらいなら経費で……」

 隣の借り暮らしのありえないくれないのもののけ姫は、白い魔女と腐海を焼き払う相談を続けていた。お菓子がいつの間にか神隠しにあっている。見ろ、包み紙がゴミのようだ。

「戦うのはいつ?」

「対馬での目撃日時と出雲大社からの霊視の結果を総合して予測すると、三日後には北陸・能登半島に着くそうです。加賀や金沢での被害を出さないために、上陸前に北陸沖で迎え撃ちます。つまり日曜日ですわね」

 台風の進路みたいだな。

「日曜日かあ。ちょうどいいね」

 ナギーが言った。確かにちょうどいい。静かな休日を過ごせそうだ。

「もちろん一緒に来るよね」

 え?

「なぜ俺も?」

「現地取材をしてもらわなくてはなりません」

「いや、それはちょっと」

 バトルに巻き込まれるのは避けたい。

「帰ったら私がフェイスブックスであなたのページを作ってあげてもいーんだよ? 旅先でのふれあいの代わりです。とーっても素敵な趣味を実名、顔写真つきで全世界に公開して、トモダチを募集するの。学校のみんなにも知らせて、勇者様のご誕生」

「勇者様にはなりたくありません。ヘタレ戦士でいいならお供させてください」

 特殊能力なしのレベル1なのに、パーティに組み込まれてしまうとは。何か逃れる方法はないものか……。

「あ、そうだ。アニー、これって特殊部隊か何かの極秘任務だよね? 一般人に機密情報が漏れるのはまずくないかな」

「構いませんわよ」

 俺とナギーのやりとりを見ていたアニーは、素っ気なく答えた。いつの間にか、どこか冷たい目つきになっている。

「え、そうなの?」

「陰陽寮の名を出さなければ。来るのは一部で大して強くもない相手ですから、それほど危険でもありません。それよりも、公開したくないとっても素敵な趣味……。殿方の趣味嗜好は大体予想がつきますわ。大きいことは素晴らしい、というのは太平洋の向こう岸でやっていただけません?」

 汚らわしい、とでも言いたげだ。

 鋭鋒をそらすべく、自ら弁護する。

「あ、いや、そっち方面ではなくて、その、オトナびたおねーさんが素敵だな、ということで。でも貴女ほどではありませんから」

「あら、そうですの」

「そーだよね~」

 嫌な視線の発信源が変更された。とにかく話題を変えよう。

「その話はまたいずれ。それで、俺はその日どこへ行けばいいのかな?」

「まずはナギーと一緒に京都に来てください。そこで落ち合いましょう」

「あの駅でいい? 切符は私が用意するよ」

「いいですわよ」

 京都駅のことかな。そういえば、ナギーは金を持っていないはずだが……。どうするつもりなのだろう。

「二人分ね」

 ナギーがリビングで座っている赤靴に視線を移す。陰陽師の従者は、唸りながらボブカットの頭を片手でかきむしっている。

「あの子は留守番です」

 主の言葉に反応して、従者が元気よく叫ぶ。

「お留守番ですう~。緊急事態に備えて、たっぷりと霊気を養いたいと思いまあすっ」

 静かな休日を過ごすのはお前か。

 やれやれ、とかぶりを振って主のアニーが言う。

「いつまでたっても自覚が……。一人分、頼みますわね。……だいぶ暗くなってまいりましたわ。そろそろおいとま致します。あとのことは携帯電話で連絡を。赤靴、帰りますわよ」

 アニーが席を立ち、玄関へ向かう。

 セーブっ、セーブうぅっ、セーフですううぅっ、と絶叫した後、赤靴がゲーム機をテーブルに置き、風呂敷包みを抱えて後を追った。

 玄関で丁寧にお辞儀をして立ち去った主従を見送ってから、ナギーに尋ねる。

「あの二人、本当に陰陽師とシキガミとやらなのか?」

 仲間の物の怪が遊びに来ただけにも見える。

「うん。私と最初に会ったとき、火の玉浮かべて祓いにきたから」

 苦笑しながらナギーが答えた。

「あーなるほど。人魂ひとだまを浮かべてね……って、それ幽霊じゃねーか」

 説得力皆無。担がれたのかもしれない。

 廊下を歩いて、ダイニングに向かう。

「さっきのバミューダの話、あれも本当なのか?」

「そうよ。海にも色々あるの」

 少し沈んだ口調だった。

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