第7話 ハル
「あ…れ…」
「あっ、起きた?」
しばらくして、気を失っていたハルの目が覚めた。
「……!?あ、貴方達は一体…!?」
「えっ…?さっき、君と戦ったんだけど…」
「戦った…?私が…?」
ハルはガバリと起き、二人を警戒した。
しかし、先ほどとは明らかに様子がおかしかった。
「お前がいきなり攻撃してきたんだ。…まさか覚えていないのか?」
「覚えているも何も…私は外に水を汲みに行ってて…、あれ…?」
「どうした?」
指を顎につけ、ハルは考える仕草を取った。
「そこからの記憶がないんです…」
「…なんだと?」
「じ、じゃあ…あたし達と一緒に戦ったあの子は…誰だったの…?」
「………」
「………」
「ちょ…ちょっと!二人して黙らないでよ!怖いよ!」
「す、すいません…よいしょっと…」
ハルはベッドから起き上がり、脱がされていたブーツと手袋をつけた。
「もう動いて大丈夫なのか…?」
「はい。魔力の消耗が激しいですが、体に傷はないようですので」
「…ごめんねー、ハルの魔力を吸ったのはこっちにいるなっがい髪のサークル族なのよ」
「ふん、そうしなければお前は死んでいただろうな」
「なっ…!!」
「私の知らない間でとんでもないことが起こってたらしいですね…」
「あはは…ま、まあ気にしないで♪」
「はい。ところで…もしかして貴方達はラケーターですか?」
「……何故ラケーターのことを知っている?」
コリンはハルを凝視した。
ラケーターは表世間の人間は決して知らない職業。
しかし、ハルの次の言葉で全てわからされた。
「えっ?何故って…私もラケーターだからですよ」
「あっ…そうだったのか…」
「コリン〜あんまり警戒しなくていいじゃないか〜」
「…私はお前がラケーターなことが意外だ」
「あっ、そっか。コリンはぼっちだったもんね。他のラケーターの存在なんて無関心だもんね〜」
「黙っていろ。口を一生聞けないようにしてやろうか?」
「ちょ、ちょっと…お二人さん…」
「まあ、そういうあたしも他のラケーターのことなんて知らないんだけどねー」
「なんだそれは…」
「あはは…」
コリンはずっと一人での任務が多かった。
だから自分の上以外に他のラケーターのことなど知りもしなかったのだ。
それに、ハルはとてもラケーターには見えなかったのだ。
ハルの容姿から見て、自分よりも年下なのだろう、まだまだあどけなさが残っているのだ。
「私にはお前は人殺しをするラケーターには見えない」
「確かにねー。こう…緊張感というか…そういうのがないよね」
「あはは、よく言われます…私はラケーターですが、人殺しの任務を受け持つことは滅多にないんです。だから、リリン様がいる本部にもあまり行っていません」
「…事情があるのだな?」
「うーん…そこはノーコメントで♪」
「まあ、触れないほうがハルのためにもなるかもね」
「すいません……遅れましたが、自己紹介しておきますね。私の名前はハル。フラン族です。風術師で、ラケーターです」
「じゃああたしも!あたしの名前はローリィ・マリン。トライ族の忍だよ!で、こっちのサークル族はコリン・クライド!一応魔術師だよ!」
「一応ではない、魔術師だ」
「それで、お二人はどうしてここに…?」
「えーとねぇ…」
―――――――――――
「ふむふむ…そういうことなら、私もついていきます!」
「え?」
「その白い少女を探すんですよね。旅は道連れっていいますし、お供します!」
「…ありがとう、ハルはあたし達の妹分だね!」
「ふふ、そうですね♪」
「いいのか?そんなに次々と仲間が増えていって…」
「捜索任務なんだから、人は多いほうがいいでしょ。それに、ハルだって風術師。きっと役に立つはずよ」
「…まあな」
風術師。
風を自在に操ることが出来るフラン族きっての特殊能力を操る者がなれる職業だ。
また、先程戦ったように、彼女自身も高い魔力を持っており、その魔力をペンダントで風に転換し、様々な技を発動することが出来るのだろう。
「よーし、そうと決まれば出発だー!」
「残念だなローリィ、もう夜だ」
「え…ええぇっ!?」
ローリィは窓を開け放し、外を見た。
そこに太陽はなく、月が顏を出していた。
「まあ出発したのが夕方だったからな。無理もない」
「今日は私の家に泊まって、明日の朝出発しましょう」
「えっ、いいの?」
「はい!私の家はそこまで狭くありませんし、三人寝れるスペースは充分あります!」
「い、いや…そういう意味じゃなくて…」
そんなこんなで新しい同行者、ハルの家で、三人は明日の出発のために体を休めることにした。
欠けている月が見つめるなか、三人はいつの間にか夢の世界におちていった…