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第6話 風術師


「本当に使えない子だね、この子ったら!」

「こんな飯食えるかっ!まるで毒でも入っているようだ!」

「邪魔、どっか行ってよ!」


「…っ…ひっく…」


部屋の隅に縮こまっている少女。

カタカタと震え、ポロポロと流している。

腕や膝には痣ができていた。


彼女は一体…?


―――――――――


「おーい、コリン!」

「……っ!」


コリンはローリィの声で正気に戻った。


「何ボーッとしてんのさ、さっきからずっと呼んでるのにわからなかったの?」

「あぁ…、いや、別になんでもない…」


――少女がいた。

――でも、まるでモザイクがかかっているかのようにその少女が誰なのかはわからなかった。

――一体誰だったのだろうか…?


「全く…あたしはリリン様の命令であんたについてってやってんだから、あんたが足引っ張ってどーすんのさ!」

「すまない…」

「…ああもう!コリンがそんなだとこの先不安よ!」


ローリィは一歩先を歩き、コリンに背を向けている。


「…私を元気づけてくれているのか?」

「……っ!?ち、違う!絶対違うっ!コリンのバカ!!」


後ろから見ても、ローリィは耳まで赤くなっていることがわかった。


「すまないな…んっ?」


コリン何かに気づき、歩くのをやめた。


「ど、どうしたのよ?……わぁあっ!?」


突然、二人目掛けて強い風の衝撃波が飛んできた。

コリンはシールドを張り、ローリィは瞬時に上へ避けた。


「……ふふふ…」


風が吹き抜けた方向を見ると、そこにはツインテールの少女が浮いていた。

彼女の周りには風が吹き荒れており、異様な雰囲気が漂っていた。


「…!お前は、フラン族か…」


赤い瞳に黒髪、6枚花の紋章のついた髪留めを付けており、黒いワンピースを着ている。

コリンはその背格好ですぐにわかった。


「特殊能力者が多いっていわれているフラン族だね。……あの子の能力は…」

「風術師、だな…。風を操ることができる特殊能力だ。彼女の首からさげているあのペンダントが、彼女の魔力を風に転換する装置なのだろう…」

「詳しいのね……って!ちょっとあんた!いきなり攻撃ってどういうことよ!礼儀がなってないじゃない!!」

「ローリィ、突っ込むのが遅い」

「ふふ…私はハル。ねえねえそこのサークル族、よかったら私と戦わない?」

「…何が狙いだ?」

「別になんでもいいじゃない、ふふ…」

「可愛い顏して気持ち悪い奴……あたしも戦うよ、コリン!」

「そこの忍はおよびじゃないのに…」

「うっさい!」

「まあ、いいわ。いくわよ」


ハルはニヤリと笑うと、ペンダントに両手をかざした。


「……っ!?」


その瞬間、辺り一面に無数の小さな球体が現れ、二人に近付いてきた。


「……この球体…」

「な…なんだかよくわかんないけど…この球体を壊す!それっ!」

「!?待てっ、ローリィ!」


何かに気付いたコリンの制止より早く、ローリィはバッグからクナイを取り出し、一つの球体に投げつけた。


「かかったわね…ふふ」

「かかったって何が……っ!?」

「ローリィ!」


その瞬間、割れた球体のなかから猛烈な暴風となった衝撃波がローリィを襲った。

しかし、ローリィに当たるギリギリでコリンは魔法を展開させ、シールドを張った。


「い、今…なにが起こったの…!?」

「…二段攻撃…」

「さすがサークル族ね。この球体には、風が入っているの。そして、球体に刺激を与えてやれば、その風が暴風となり、吹き荒れる…」

「やらしい攻撃…」

「…ふふ…つまり、この球体を全て壊すと、こうなるのよ!」


ハルは球体を自分の周りに集めると、全ての球体を壊した。


「わあっ!?」

「この風の量の衝撃波は、防ぐことも回避することもできないわよ!」


ハルが腕を振ると、風は二人の方向へと猛スピードで突き抜けていった。


――やられる…っ!


ローリィは自分の死を覚悟した。

しかし…


「…えっ…?」

「これぐらいでへばってもらっては困る…」

「こ、コリン!?」


ローリィの前にはコリンが立っていた。

ローリィに怪我はない。

コリンにも怪我はなかった。


「…そんな…あの風をくらって生きている…?…まさか…っ!?」


ハルはコリンを見つめ、驚愕した。

なんと、コリンは魔法陣を盾のように展開させ、風を吸収しているのだ。


「所詮お前の風は、魔力を風に転換しただけの偽物。元々は魔力なのだから、吸い込めばすむ話だ…」

「……そんな…っ」


ハルは膝を地面につけ、項垂れてしまった。

魔力を使い果たしてしまったのか、もう一歩も動けないようだ。


「…さあ、とどめを刺そうか?それとも命乞いをするか?」


コリンは杖をしまい、ハルを見下ろしながらそういった。


「……っ…」

「えっ…ちょっと…!」


突然、ハルは気を失ってしまったのだ。


「……一応、この子の家まで運ぶぞ。恐らくそこに一件ある家がこの子の家なのだろう」

「…不法侵入じゃない?」

「………気にするな」


ローリィとコリンはすぐに駆け寄り、ハルを抱えて家に運んだ。





その時、二人はハルに気をとられて見えていなかったのだ。

上空に飛んでいった、ハルの体からでた“赤い物体”を……

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